
加賀藩の文化奨励策により多彩な伝統工芸が盛んな金沢。九谷焼や水引細工などを体験できるスポットで、その伝統技術を使ったオリジナル作品の制作を楽しみながら、金沢の魅力を満喫できるとっておきのコースをご紹介。ひとり旅だからこそ没頭できる美術館でのひと時や気ままな街歩きで日常をリセットしよう。体験を通して地元の人と触れ合えるのも大切な旅の思い出に。

JR東京駅から北陸新幹線「かがやき」または「はくたか」で2時間27分〜3時間14分、金沢駅下車
JR大阪駅からJR特急「サンダーバード」で1時間20〜30分の敦賀駅で乗り換え、JR北陸新幹線「かがやき」または「はくたか」で41〜59分、金沢駅下車



金沢駅に着いたら、金沢周遊バスを利用してまずは体感型のモダンアートが魅力の「金沢21世紀美術館」へ。一年中人気のスポットなので、混み合う前に入館してゆっくりと鑑賞。まずは感性を磨きたい。金沢城公園内のカフェ「豆皿茶屋」でランチをした後は、兼六園脇の広坂を登った坂の上にある「国立工芸館」で再び感性を刺激。新旧さまざまな作品にふれて、これから制作する作品へのイメージをふくらませよう。「工房ひょんの木」での九谷焼の絵付け体験に挑戦。真っ白なベースの器に筆を入れる瞬間は緊張するが、描き進めていくうちに絵付けの楽しさにハマり、2時間の体験はあっという間。制作の後は、雰囲気抜群の金沢町家を利用した創作和食の「八十八」で地元の旬の食材と地酒を味わい、大正ロマン漂うホテル「金沢白鳥路 ホテル山楽」の天然温泉でゆっくりくつろいで1日をしめくくろう。

1. 金沢21世紀美術館のレアンドロ・エルリッヒ《スイミング・プール》2004/撮影:渡邉修/写真提供:金沢21世紀美術館 2.エントランスで堂々とした存在感を放つ金子潤作《無題 13-09-04》2013年/写真:太田拓実/写真提供:国立工芸館 3. 金沢白鳥路 ホテル山楽のロビーは華やかでノスタルジックな雰囲気が魅力的 4. 金沢のおいしいものを集めた御膳が写真映えも抜群の豆皿茶屋 5. 九谷五彩の絵の具を使って本格的な絵付けができる工房ひょんの木



1.「建築界のノーベル賞」といわれるプリツカー賞を受賞した建築家ユニット・SANAA(さなあ)の設計/撮影:石川幸史/提供:金沢21世紀美術館 2. ヤン・ファーブル《雲を測る男》1998 © Angelos bvba/撮影:中道淳/ナカサアンドパートナーズ/提供:金沢21世紀美術館
かなざわにじゅういっせいきびじゅつかん
「まちに開かれた公園のような美術館」が建築コンセプト。国内外で活躍する注目アーティストなどの企画展のほかにも、建物の内外に自由に見たりふれたりして楽しめる作品が多数展示されている。時間帯によって表情が変わる作品もあるため、気に入った作品があれば自分のペースで好きなだけ、何度でも観賞しよう。撮影OKの作品もあるので、混雑前に押さえておこう。※2027年5月から翌2028年3月まで改修のため長期休館予定。


1.お食事と甘いものがあれこれセレクトされている殿皿御膳 2.店内からは橋爪門続櫓や五十間長屋などが間近に眺められる
まめざらちゃや
鶴の丸休憩館内にあるカフェ。笹寿しなどのお寿しと汁物、日替わり和洋菓子など9つの品がかわいい小皿にのった殿皿御膳2800円は、金沢のおいしいものが一度にいろいろ味わえる人気のメニュー。加賀棒茶または金沢珈琲のセットドリンクと一緒にゆっくりと味わってみて。


1.建物は明治期に建てられた2棟の旧陸軍施設を活用している/写真:太田拓実/写真提供:国立工芸館 2.移築・復元された松田権六の仕事場/写真:太田拓実/写真提供:国立工芸館
こくりつこうげいかん
2020年に東京から金沢へ移転した近現代の工芸・デザイン専門の美術館。19世紀末以降の国内外の工芸やデザイン作品約4000点を収蔵し、展覧会ごとに作品が入れ替わる。3つある展示室に加え、人間国宝で金沢出身の漆芸家・松田権六の工房の移築・復元展示も見もの。デジタル鑑賞システムやアートライブラリ、ミュージアムショップもある。
バス停出羽町から徒歩5分
金沢市出羽町3-2
9時30分〜17時30分(入館は〜17時)
月曜(祝日の場合は翌平日)、展示替え期間
文化施設共用駐車場230台


1.武家屋敷として建築された歴史ある金沢町家を利用した工房 2.町家ならではの穏やかな空間でリラックスして体験できる
こうぼうひょんのき
築160年の武家屋敷を利用した九谷焼の工房。白い釉薬をかけて一度焼いた器に、「赤・青・紺青・黄・紫」の5色からなる昔ながらの九谷五彩の和絵の具を使って自由に絵付けができる。体験時間の2時間以内であれば、ベースとなる器を複数購入して絵付けしてもOK。焼成後着払いで発送。梱包代1個150円。
バス停香林坊から徒歩8分
金沢市香林坊2-5-29
2500円(2時間程度)+生地(器)代300円〜
10〜17時 ※前日の17時までに要予約、電話または金沢観光協会HP内「かなざわ自由時間」から
水・木曜
なし

井出さん親子が九谷焼の絵付けをサポートしてくれる。何を描くか事前に考えてから訪れよう。
ガラスでできている青、紺青、黄、紫とガラス成分の少ない赤、そして呉須という線を描く黒の絵の具があり、使い方や塗り方の違いを学ぶ。
皿や茶碗、マグカップなどから絵付けする器を選ぶ。器に、にかわを塗ってくれるので、えんぴつで直接下書きをする。
最初に呉須で線を描き、次に赤、そしてそのほかの4色の絵の具の順で絵を描く。4色の方は、焼く前後で色が違う。

焼き上がった商品が手元に届くので、絵付けが終わった後の写真を見比べてみると面白い。思い通りにできあがったかな。


1.お酒とともに地元の旬食材を使った料理が堪能できる人気店 2.木虫籠とよばれる細い出格子が特徴の金沢町家。白いのれんが目印
はとは
江戸時代に建てられた町家を利用した小料理屋。お造り盛合せ2860円〜、おばんざい660円〜などその日に仕入れた素材を活かしたおすすめメニューが豊富で、和食をベースにさまざまな料理店での経験を活かした店主ならではの創作性に富んだ料理が味わえる。料理に合う地酒は半合660円~でも注文できる。


1.大正ロマン風の装飾とステンドグラスが美しいロビー 2.薄茶色の天然温泉で満たされた大浴場でリラックス 3.ベーシックツインルーム。客室は全室30㎡以上ある。シングルルームはないので1名利用可能なプランを選ぼう 4.地元食材を使った郷土料理も登場するブッフェスタイルの朝食も評判
かなざわはくちょうろ ほてるさんらく
大正ロマンをテーマにした、古き良き時代の優雅さが漂うホテル。金沢城公園に隣接する好ロケーションでありながら、館内には天然温泉の大浴場を完備しているのも嬉しいポイント。湯は「温まりの湯」とも言われている「ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩温泉」。クラシカルで上品なデザインの客室では、寝具やタオル、パジャマの品質にまでこだわった快適な時間を過ごせる。
バス停兼六園下・金沢城から徒歩5分
金沢市丸の内6-3
1泊朝食付2万8200円~(1室1名利用料金) ※宿泊税、入湯税別途
15時/12時
50台(1泊1000円)
85室

2日目は、鮮魚や加賀野菜が店頭に並び活気あふれる「近江町市場」からスタート。ステンドグラスの神門が美しい「尾山神社」まで散歩したら、近くのデパート内にある「FUMUROYA CAFÉ 香林坊大和店」で加賀麩づくしのランチを堪能。金沢一の繁華街・香林坊&片町を過ぎ犀川を越えた先にある「加賀水引 津田水引折型」が、この旅で二つ目の体験スポット。加賀水引のお花のチャーム作りは指先の繊細な動きが美しさの要! 一見、難しそうに感じるかもしれないが、最後には達成感とともにお気に入りのひと品を手にできる。体験後は、わざわざ足を運びたい甘納豆の名店「甘納豆かわむら」をお目当てににし茶屋街をぶらり。帰りの新幹線の時間より少し早めに金沢駅へ戻り、「金沢百番街 あんと」で最後のおみやげ探しと新幹線の車中で食べるためのお弁当を手に入れよう。

1.観光スポットとして賑わいながらも市民からの信頼も厚い近江町市場 2・3.基本となるあわじ結びを利用して花のモチーフ作りに挑戦 4.色とりどりのガラスが輝く尾山神社の神門 5.甘納豆かわむらはにし茶屋街を代表する人気スポットのひとつ 6.ご飯以外のすべての料理とお菓子に麩を使用した加賀麩とりどり膳



魚屋の店頭には近海で採れた新鮮な海の幸がいっぱい ©石川県観光連盟
おうみちょういちば
藩政期に開設され、現在まで300年以上続く市場。鮮魚や青果、惣菜など約170店舗が軒を連ね買い物客で賑わう。新鮮な魚介や土地の野菜などを見て歩くだけでも楽しい。海鮮丼や金沢おでんなどの飲食店のほか、ドジョウなどの串焼き、コロッケといった「ちょい食べ」グルメも充実しているので、気軽に土地の味覚を味わいたい。テイクアウトしたものは、各店舗または場内で食べることもできる。
バス停武蔵ヶ辻・近江町市場からすぐ
金沢市上近江町50
店舗により異なる
店舗により異なる
近江町ふれあい館駐車場225台ほか(すべて有料)


1.神門の光はかつて日本海を行く船の目印にもなったという ©石川県観光連盟 2.カラフルなガラスが目を引く 3.黒光りする瓦屋根を載せた入母屋造りの拝殿 ©石川県観光連盟
おやまじんじゃ
加賀藩祖の前田利家公と正室・お松の方を祭る神社。石段の上にそびえる三層の神門は、明治8年(1875)に建立されたもので、全国でも珍しい和漢様の3つの建築様式が用いられている。最上部の第三層には当時ギヤマンといわれた4色のガラスがはめ込まれており、夜はライトアップが美しい。


1.麩のバリエーションの豊かさに驚く加賀麩とりどり膳 2.くるま麩のフレンチトーストは軽めのランチにも 3. デパート内にあるカフェで一人でも利用しやすい
ふむろやかふぇこうりんぼうだいわてん
慶応元年(1865)に創業した加賀麩の老舗・不室屋のカフェ。加賀麩とりどり膳3200円は、すだれ麩や生麩、くるま麩などの多彩な麩を郷土料理の治部煮や刺身、カツレツなどに料理した麩ずくしのメニュー。弾力のある車麩特有の食感を活かしたくるま麩のフレンチトースト2200円もおすすめ。


1.結納品の店として親しまれてきた名店。水引の新しい形を提案する 2. 現在は5代目が伝統の技を受け継ぐ老舗
かがみずひき つだみずひきおりかた
大正時代、立体的な水引細工と折型を考案し全国に広めた津田左右吉が創業した加賀水引の店。店頭には水引を動物や草花など立体的に結んだ水引細工やモダンな水引アクセサリーが並び、職人がひとつずつ手作りする様子が間近で見られる。先代の作品が展示される2階スペースで水引体験ができる。
バス停広小路からすぐ
金沢市野町1-1-36
水引体験1430円〜 ※要予約。基本2名以上から受け付け、1名の場合の日時は要相談
10〜18時(土曜は〜12時)、体験は平日10~15時
日曜、祝日
4台

今回の体験は花のモチーフの水引チャーム作り2750円、所要60分。
マット系からラメ入りまで色とりどりの水引から5本を選ぶ。同系色からグラデーションになるように選ぶのがおすすめ。
軽くしごいてカーブをつけ、あわじ結びのベースとなる3つの輪を結ぶ。要を抑えながら、5本の配列を整えつつ穴を締める。
配列を整えたまま、中央の穴に5本を通して4枚目の花びらの輪を作る。もう片方の端を右下の輪に入れて先に5枚目ができあがる。

配列が乱れないように内側から順番に水引を引っ張って4枚目の穴を閉めると完成! 5枚の花弁が同じ大きさになっているときれい。


情緒のあるにし茶屋街を散策 ©石川県観光連盟


1.石川県能登大納言80g460円、国産白花美人80g410円、Hojichaほうじ茶くるみ40g450円 2.一店舗のみのため、ぜひお店に訪れてお気に入りの甘納豆を探してみて
あまなっとうかわむら
石川県産の大浜だいずや大納言小豆など厳選した素材を使った甘納豆専門店。砂糖の量はできる限り減らし、丁寧に甘みを調整することで、豆の持ち味が際立つ仕上がりに。17〜20種類の甘納豆のほか、クルミや栗、芋、柑橘類の皮などを使った糖菓子、羊羹も。1階にはテイクアウトスタンド、2階にはカフェを併設。
バス停広小路から徒歩3分
金沢市野町2-24-7
9時30分〜18時(日曜、祝日は9〜17時)、テイクアウトスタンドは9時30分〜16時30分、カフェは10〜17時最終入店(日曜、祝日は 〜16時最終入店)※カフェは6歳以上入店可
第1火曜(祝日の場合は営業)※1・5・12月は第1火曜も営業
7台


1.金沢を代表する和・洋菓子の名店がずらりと勢揃い 2.笹寿司などのお寿司と多彩なおかずを盛り込んだ芝寿しの北陸浪漫1512円 3.抹茶クリームを煎餅で挟んだ金沢 うらたのこい茶8枚入1113円
かなざわひゃくばんがい あんと
和菓子から洋菓子、地酒、海産物、伝統工芸品まで、おみやげにぴったりの金沢&北陸の名物が見つかる専門店街。駅ナカにあり出発間際まで買い物できるのが便利。帰りの新幹線で食べるお弁当はここで手に入れよう。寿司店や金沢おでんの名店、地元ラーメンチェーン店など食事処も充実しているので、時間に余裕があれば食べてから乗車するのもいい。




美術館を自分のペースで静かに気兼ねなく鑑賞できるというのはひとり旅の大きなメリット。その一方で、九谷焼の絵付けや水引の制作体験では、先生方とのおしゃべりを楽しめる時間もあったりして、地元の人と交流ができたのも良かった。絵付けも水引もどちらも想像以上に完成度の高いものが出来上がるので、旅の思い出の品としてだけでなく、日常生活のなかで活用できるお気に入りのひと品を作ることができた。宿は街なかという好立地に加え、天然温泉のお風呂に浸かることができ、心身ともにリフレッシュできる旅になった。