古代金銅仏の最高傑作といわれる薬師三尊像を祀る薬師寺。火災などで焼失した創建時の建物も、昭和から平成にかけて復興。新旧の壮麗な伽藍と美仏を堪能しよう。
やくしじ
7世紀後半、天武天皇が皇后(のちの持統天皇)の病気回復を祈り、建立を発願。藤原京に創建され、平城京遷都に伴い、養老2年(718)に現在地に移された。のちの火災などで東塔を除く創建時の建物を失ったが、昭和~平成にお写経勧進によって中心伽藍を白鳳様式で復興し、玄奘三蔵院伽藍を造営。2021年春には10年以上かけて行われた東塔の大修理が完了した。これら新旧の壮麗な堂塔のほか、本尊薬師三尊像など見事な仏像も数多く伝えている。
薬師寺の本尊。薬師如来坐像を中心に、向かって右に日光菩薩立像、左に月光菩薩立像が優雅にたたずむ。漆黒に輝く肌は銅造とは思えないほど滑らかで、日光・月光の腰をひねった姿も優美。古代金銅仏の最高傑作ともいわれる。
薬師三尊像を祀る薬師寺の中心の堂。昭和に始まった白鳳伽藍復興のトップを切って、昭和51年(1976)に完成した。龍宮造といわれる壮麗な建物で、地上22mの屋根の両端には金色の鴟尾が誇らしく輝いている。
奈良時代に元明天皇の冥福を祈って建立されたのが始まりで、現在の建物は鎌倉時代の再建。色鮮やかな堂塔が多い境内にあって、落ち着いたたたずまいを見せている。
東院堂の本尊。若々しい表情と、抜群のプロポーションを特徴とし、白鳳彫刻の代表作として知られる。薄い裳の下から脚が透けて見える技法は、古代インドの芸術様式・グプタ様式の影響を受けたものとか。
創建当初から唯一現存する建物。2009 年から全面解体修理が行われ、2021年春に完了した。三重塔だが各層に裳階(もこし。飾り屋根のこと)が付くため六重塔に見える。この大小の屋根が織り成すリズミカルな建築美から「凍れる音楽」と称賛される。初層内陣には中村晋也氏作の釈迦八相像(因相)が祀られている。
法相宗の祖で『西遊記』のモデル・玄奘三蔵の遺徳を偲ぶため、1991年に造営。玄奘塔に玄奘三蔵の舎利(遺骨)と像を祀り、背後の大唐西域壁画殿には平山郁夫画伯が「玄奘三蔵求法の旅」を描いた大作を安置する。特別公開時のみ入堂可能。
正面41m、側面20m、高さ17mもある薬師寺最大の建物。2003年に復興された。本尊は弥勒三尊像(重要文化財)。ほかに日本最古の仏足石(国宝)、仏足跡歌碑(国宝)、平成に奉納された釈迦十大弟子像などを安置する。
2017年に復興。正面41m、側面16m、高さ14mの大建築。堂内には文化功労者の田渕俊夫画伯が描いた本尊の阿弥陀三尊浄土図を中心に、全長約50mもある壁画「仏教伝来の道と薬師寺」を祀る。特別公開時のみ入堂可能。
東塔と向かい合って立つ。昭和56年(1981)に復興されたもので、古色を帯びた東塔に対して色鮮やか。初層内陣には文化勲章受章の彫刻家・中村晋也氏が奉納した釈迦八相像(果相)が祀られている。