「日本の植物分類学の父」とよばれる牧野富太郎博士をモデルにしたテレビドラマをきっかけに、博士ゆかりの地に注目が集まる。博士の業績を顕彰する「高知県立牧野植物園」を鑑賞して、博士の生まれ故郷の佐川町へ。四季の草花を愛でながら話題のスポットを巡ろう。
文久2年(1862)、高知県高岡郡佐川町生まれ。幼いうちから独学で植物学について研究を重ね、94年の生涯において収集した標本は約40万枚におよぶ。新種・新品種を含め1500種類以上の植物を命名し、『牧野日本植物図鑑』をはじめ、数多くの植物書物を著し、日本植物学の礎を築いた。
自らを「草木の精」と称した博士が、熱弁を振るった植物観察会は今も受け継がれ、活動が続いている
[写真提供]高知県立牧野植物園
植物の特徴をつかんだ精緻な筆致で描かれた博士の植物図(バイカオウレン)
[写真所蔵]高知県立牧野植物園
博士ゆかりの植物約250種類を中庭に植栽している牧野富太郎記念館 展示館。自然と調和した建物は内藤廣氏が設計し、数々の建築賞を受賞している
1.地形を活かした園内を歩くのは、ちょっとしたハイキング気分。春は桜も美しい/2.牧野富太郎記念館 展示館では少年期、青年期、壮年期、晩年の4つのテーマで博士の生涯などを紹介/3.鬱蒼と熱帯植物が生い茂る温室。ウォーターガーデンは滝を中心にシンメトリーに配置された柱が神殿を思わせる
博士ゆかりの植物園をカメラ片手に
こうちけんりつまきのしょくぶつえん
高知市街地に近い五台山は、博士が生前に植物園の候補地として挙げていた場所。開園時からある南園や開園50周年で造園された回遊式水景庭園、熱帯植物が生い茂る温室など、多数のみどころがある。見ごろの植物は公式ホームページをチェック。
高知県高知市五台山4200-6
JR高知駅からMY遊バスで30分、牧野植物園正門前下車すぐ 高知東部自動車道高知南ICから約4㎞
入園730円
9~17時(最終入園は16時30分)
メンテナンス休園あり(2024年は6月24日・9月30日・11月25日)
225台
1.ランチで人気のシェフ特製ハンバーグのココットランチ1500円/2.自然光がたっぷりと差し込む店内。レストランだけの利用もできる
れすとらんしー. える. がーでん
植物研究交流センター3階にあるレストランでは旬の食材を使った地産地消のランチメニューをラインナップ。ガラス張りになった店内からは緑豊かな園内が見渡せる。
9時~16時30分LO(モーニング10時30分LO、ランチ15時LO)
珈琲バナナケーキ400円とコーヒー450円(セット100円引き)
かふぇあるぶる
正門近くにある牧野富太郎記念館 本館内のセルフスタイルのカフェ。緑に囲まれたテラス席ではドリンクやオリジナルスイーツが味わえる。
11時~16時30分LO
1.食や文房具など商品は多彩。博士の植物図の額絵3300円やポストカード165円も人気/2.Makino original blend teaはユズ、ウコン、ミソハギなど、全9種類あるティーバッグタイプの植物園オリジナルブレンドティー。各324円/3.バイカオウレンの植物図モチーフのパッケージがかわいい生姜クッキー(左)と土佐茶クッキー(右)各1080円
まきのみゅーじあむしょっぷさくら
植物研究交流センター3階のショップは「牧野富太郎博士をさまざまな角度から研究するラボ」がコンセプト。植物図のグッズや県内特産品が豊富。
9~17時
1.博士と植物をあしらった牧野ボールペン各715円はブラックとダークグリーンの2色展開/2.博士やゆかりの植物が描かれた牧野富太郎注染手ぬぐい各1980円/3.Café arbreはすぐ隣。園内を散策した後に立ち寄ろう
ぼたにかるしょっぷののか
牧野富太郎記念館 本館の入園窓口そばにあるショップ。店前には季節の植物の鉢植えが並び、店内には植物をモチーフにした多彩な商品が並ぶ。
9~17時
イネ科の多年草。昭和2年(1927)に博士が仙台で見つけ、研究生活を支えてくれた妻への感謝を込めて命名
梅に似た白い花を咲かせる常緑の多年草。生家の裏山に咲いていたことから、博士はこの花をこよなく愛した
野菊の一種。明治17年(1884)に22歳の博士が仁淀川沿いの路傍で見出し、命名。兵庫県の県花でもある
温室の入口にあたる高さ約9mのみどりの塔の内部は大木の洞窟をイメージ。フォトジェニックな写真が撮影できる
今も城下町の風情を残す酒蔵の道。県下最古の木造洋館である佐川文庫庫舎(旧青山文庫)もこの地に移築(見学無料)
1.牧野富太郎コースなど、上町地区のまち歩きガイドを実施(詳細はさかわ観光協会 ☎0889-20-9500へ)/2.酒蔵の道に移築された名教館の玄関部分(見学無料)。内部ではここで学んだ多くの偉人たちをパネルで紹介している/3.古い蔵や古民家が立ち並ぶ風景は酒造りの町ならでは
展示資料を通して博士の人となりまでを知ることができる
生家で感じたい博士の足跡
まきのとみたろうふるさとかん
博士の生家、造り酒屋「岸屋」の母屋跡に立つ資料館。外観も当時の意匠を再現しており、裏山は博士が幼少期に植物観察で何度も訪れた場所。館内では自叙伝で博士が語ったエピソードの展示をはじめ、遺品や直筆原稿を紹介。博士が少年期に過ごした部屋をイメージしたコーナーもある。
高知県高岡郡佐川町甲1485
JR佐川駅から徒歩10分 高知自動車道伊野ICから約20㎞
入館無料
9〜17時
月曜(祝日の場合は翌日)
観光用駐車場利用70台
高知を代表する花見スポット
まきのこうえん
博士が送ったソメイヨシノの苗をきっかけに、地元有志によって多くの桜が植えられ、昭和33年(1958)に今の公園の名称となった。園内では博士命名の桜や稀少な植物を見ることができる。入口には歴史資料を展示する佐川町立青山文庫もある。「さくら名所100選の地」に選ばれた。
高知県高岡郡佐川町甲2458
(さかわ観光協会)
JR佐川駅から徒歩10分 高知自動車道伊野ICから約20㎞
散策自由
散策自由
散策自由
観光用駐車場利用70台
【佐川町立青山文庫】
入場400円
9〜17時
月曜※祝日の場合は翌日
江戸末期に建てられたという約90mの白壁の貯蔵蔵はみどころの一つ
1.博士生誕150年を記念して醸された特別純米酒のハナトコイシテ360㎖960円/2.博士命名のスエコザサをはじめ、12種類のボタニカルを焼酎に漬け込み、蒸溜したマキノジン700㎖3700円が話題を集めている/3.同社の各銘柄をはじめ、酒器なども並ぶ酒ギャラリーほていの店内/4.かつて岸屋の蔵があった場所はマキノ蒸溜所としてクラフトジンの蒸溜器が置かれている
創業420年を越える老舗酒蔵
つかさぼたんしゅぞう
高知でもっとも長い歴史をもつ慶長8年(1603)創業の酒蔵で、「船中八策」などの銘酒で知られる。博士をはじめ、坂本龍馬や吉田茂など、高知出身の多くの偉人との関わりも深い。ショップは酒蔵の道沿いにある直営の「酒ギャラリーほてい」へ。
高知県高岡郡佐川町甲1299
JR佐川駅から徒歩6分 高知自動車道伊野ICから約20㎞
9~17時(酒ギャラリーほていは9時30分~13時、13時45分~16時30分、見学は10~12時、13~16時、要予約)
土・日曜、祝日(酒ギャラリーほていは無休)
観光用駐車場利用70台
1.佐川町の桜の葉を使ったクラフトビール、さくらエール330㎖800円(期間限定販売)/2.店内製造のごちそうバウムは佐川町産米粉を100%使用。SOFT1620円とHARD1860円の2種類がある
仁淀川流域の“ごちそう”がいっぱい!
まきのさんのみちのえき・さかわ
上町地区にも近い国道33号線沿いで2023年にオープン。産直市やおみやげ売場には佐川町をはじめ、仁淀川流域の多彩な商品が集まる。木の玩具で遊べる佐川おもちゃ美術館(【料】800円、子ども500円【時】10~16時【休】水曜※祝日の場合は翌日)のほか、ベーカリーやレストランも併設。
高知県高岡郡佐川町加茂2711-1
JR佐川駅から車で約5分 高知自動車道伊野ICから約17㎞
8~18時(テナントにより異なる、冬期変更あり)
無休(テナントにより異なる)
89台
名店で味わいたい極上のうな重
たいしょうけん
大正2年(1913)の創業が名前の由来。国産ウナギを丁寧に捌き、秘伝のタレをかけて直火で焼く蒲焼きは、身は大きく、香ばしさもたまらない。うな重や丼定食上2948円などでそのおいしさを堪能したい。完全予約制(2名~)で、予約時間に合わせて料理を提供してくれる。写真はうな重上4180円。ごはんの下にも蒲焼きが隠れている。
司牡丹酒造の仕込み水で淹れるコーヒーとシフォンケーキのセット600円
歴史ある酒蔵の道の観光拠点
きゅうはまぐちけじゅうたく
幕末ごろに建てられたという造り酒屋を営んだ浜口家の邸宅。商家らしい造りや梁にも注目を。現在はさかわ観光協会が運営する特産品が揃うショップのほか、古民家カフェを併設している。靴を脱いで上がり、美しい庭が見える休憩所でゆっくりと散策の休憩を。
【電車】岡山駅からJR特急南風高知行きで約2時間24分、終点で乗換え、JR特急あしずり中村行きで佐川駅まで約30分(土讃線須崎行き普通で佐川駅まで約1時間)
【車】山陽自動車道岡山ICから高知自動車道伊野ICまで約167㎞