かつて宿場町として栄えた足助には、江戸時代からの町並みが残る。レトロな蔵が立ち並ぶ小道は、散策にピッタリ。そして見事な紅葉で有名な香嵐渓は、四季折々の景色が美しい。古い町並みと、豊かな自然を一日で満喫できる贅沢エリアをご紹介。
●名古屋駅から名鉄名古屋本線で東岡崎駅まで約35分、東岡崎駅から名鉄バス足助行きで約1時間10分、香嵐渓下車。足助の古い町並みエリア・香嵐渓へは徒歩約3分。
●東海環状自動車道豊田勘八ICから香嵐渓へは国道153号を飯田方面へ13km。
●まずは足助八幡宮南の香嵐渓ビジターセンターに立ち寄ろう。ボランティアガイド(原則予約制)による案内もおすすめ。
●江戸初期の町割りが残るエリアは2kmほどなので、のんびり散策するにはぴったりだ。
●紅葉シーズンは県道11号や県道344号で迂回するのがよい。
かつては、伊那街道(いなかいどう)、飯田街道(いいだかいどう)の宿場町として栄えた足助。江戸時代からの町割りが残るこの町は、重要伝統的建造物群保存地区に選定されていて、江戸から大正にかけての賑わいを彷彿とさせるエリアだ。「妻入り型」「平入り型」といった、往時を偲ばせるレトロな町家の姿は、眺めているだけで心が安らぐ。黒壁と白漆喰のコントラストが美しい蔵が立ち並ぶ「マンリン小路」は、散策を楽しむのにぴったりの小道だ。大正時代に養蚕指導所として建てられた足助資料館や、旧稲橋銀行足助支店の姿をそのまま残した足助中馬館もぜひ訪れたい。
約4000本ものカエデやモミジの渓谷で、秋は見事な紅葉で多くの人を集める香嵐渓は、山野草の宝庫でもある。特に、飯盛山(いいもりやま)の北西の斜面は、スプリングエフェラメル(早春の妖精)ともよばれるカタクリの名所だ。3月中旬から下旬にかけては、カタクリの可憐な花が咲き誇り、その光景は、地面に薄紫のじゅうたんを敷き詰めたよう。夏はせせらぎの音とともに川遊びをしたり、冬は深々と雪に覆われる静かなたたずまいを眺めたりと、四季折々の姿を楽しめる。
町全体が一体となったイベントが多いのも足助の魅力。一年を通して趣向を凝らしたイベントを開催している。豊かな自然とレトロな町並みを一日で満喫できる欲張りエリアだ
1.秋には約4000本ものカエデやモミジが自然の錦を織りなす/2.香嵐渓・飯盛山の北西向き斜面に群生するカタクリ。3月中旬から下旬が見頃だ
巴川沿いに続く紅葉に見とれる
こうらんけい
日本でも有数の紅葉スポットである香嵐渓。11月には夜間のライトアップも開催され、遠方からも多くの観光客が訪れる。シーズン外でも春はカタクリの花、夏はみずみずしい新緑と年間通して豊かな自然の景色を楽しむことができる。
三栄和尚は「もみじの開祖」ともよばれている
香嵐渓発祥の寺/曹洞宗の古刹
こうじゃくじ
曹洞宗の古刹で応永34年(1427)に創建。寛永11年(1634)に三栄和尚が般若心経を唱えながら、巴川から寺に至る参道にモミジや杉を植樹したのが香嵐渓の始まり。
昔ながらの暮らしを体験できる
さんしゅうあすけやしき
明治から昭和30年(1955)ごろの豪農をモデルに造られた施設。機織り体験や鍛冶屋体験などもできる。
バス停香嵐渓から徒歩10分
愛知県豊田市足助町飯盛36
入館300円
9~17時(最終入館16時30分)
木曜(祝日の場合は翌日、11月は無休)
公共駐車場利用(有料、料金は季節により異なる)
愛知県で初めての国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された「足助の町並み」。物資運搬や庶民通行の要所として栄えた商家町で、江戸時代後期から明治末までの面影を垣間見ることができる。
古くから足助の中心エリアとして栄えた場所。町家が並ぶ風情あるエリアだ
昔懐かしい風情ある町並みを歩く
あすけのほんまちどおり
かつて三河湾で作られた塩を山間部へ運ぶための「塩の道」として栄えた伊那街道(いなかいどう)。物資を運ぶのに馬が使われていたことから「中馬街道」ともよばれていた。格子や白壁の建物が今でも残る古い町並みは温かく懐かしい気持ちにさせてくれる。
進物や手みやげとして地元の人に親しまれている「かゑで」は素朴な味わいだ
数々の賞を獲得した足助の銘菓
かえでほんぽ かとうや
創業70年を超える足助の老舗和菓子店。銘菓「かゑで」150円はいぶした玄米を粉にして餡を詰めた和菓子。洋菓子も多く展開しており、なかでもほどよい甘さのシュークリームや濃厚な味わいのレアポテト(グラム売り)は売り切れ必須の人気商品だ。足助橋のすぐそばにある足助商店街を代表する歴史ある名店。
書店の奥に喫茶とギャラリーを併設。企画展やイベントも開催している
築150年余の蔵を利用した書店
くらのなかぎゃらりー まんりんしょてん
江戸時代中期から立つ蔵を利用した書店兼ギャラリー。蔵横のレトロな情緒あふれる小径は「マンリン小路」として親しまれている。足助にまつわる書物も豊富に取り揃えており、コーヒーと自家製スイーツが楽しめる喫茶も併設しているので、散策の休憩地に最適だ。高い天井で開放感のあるカフェスペース。
こだわりのコーヒーを景色を見ながら楽しもう。
香り高いコーヒーと紅葉を楽しむ
かたかご
体験型民俗資料館・三州足助屋敷に併設。3種の生豆をブレンドし、手作りの炭で自家焙煎したコーヒーをテラス席で味わえる。5・6月には青々としたモミジと涼しげな川のせせらぎで初夏の香嵐渓を楽しめる。外の席では巴川を見渡すことができる。
足助の町並みを眼下に見下ろすことができる
真弓山にそびえる山城
じょうせきこうえん あすけじょう
標高301mの真弓山の山頂を本丸とした足助城は、戦国時代にこの地を治めた足助の鈴木氏が築城したと考えられており、廃城になった約400年後の発掘調査を経て平成5年(1993)に復元された。高櫓や長屋など戦国時代の城を忠実に再現している。
おにぎりやイチゴまでもおいしくなると評判の「足助直し」
足助の歴史と食、文化を感じる塩問屋
たばこや しおざ
足助が塩の道として栄えていた江戸時代から塩問屋を営む。その間受け継がれてきた足助の塩を「足助直し」540円(300g)として販売しているほか塩にまつわる各種商品も取り揃えている。築200年の建物を修理・復元したお店は有形民俗文化財にも指定されている。莨屋の建物は文化財にも指定されている。
店内はレトロで落ち着いた雰囲気。コーヒー以外の飲み物も豊富
足助の町並みに溶け込むレトロカフェ
ろじうらのかふぇ ばんばんどう
路地裏にひっそりと構える隠れ家のようなカフェ。喫茶スペースに配された古道具がノスタルジックな足助の雰囲気に溶け込む。野菜とスパイスたっぷりのカレーや自家製シロップのドリンク、スイーツなどが味わえる。地元の野菜を使ったカレーは常時3種類。写真は焼きチーズきのこカレー。