
秋の戸隠と長野市を満喫するひとり旅プラン。紅葉に彩られた参道をたどって戸隠神社を参拝。香り高い新そばを味わい、この時期ならではの地酒をおみやげに。秋色に染まる戸隠連峰を水面に映す鏡池などの散策や、手打ちそば体験もお楽しみだ。長野市では、国宝の善光寺や美術館を訪れ、仲見世通りをそぞろ歩く王道コースを巡る。

東京駅から起点となる長野駅までは北陸新幹線で1時間20分~1時間45分。
大阪駅からは北陸経由と名古屋経由の2ルートがあり、北陸経由では特急サンダーバード+北陸新幹線で3時間40分~4時間。名古屋経由では東海道新幹線+特急しなので4時間~4時間30分。


1日目の戸隠は広いエリアにみどころが点在しているが、うまく回れば公共交通機関で十分。バス利用なら新そばと一緒にこの時期ならではのお酒「ひやおろし」を味わうことも可能だ。参道を含めて2時間ほどの散策を楽しむ。スニーカーなど歩きやすい格好で、天気の急変に備えて雨具も携行したい。また、散策路周辺はツキノワグマの生息地でもあるので、熊鈴があると安心だ。大きな荷物がある場合は、戸隠行きのバスに乗る前に長野駅のコインロッカーや宿泊予定の宿に預けておこう。2日目は長野市内の王道ルートを散策する。歩きやすさを考慮して長野県立美術館から善光寺、仲見世の順に回ったが、多少の上り坂が気にならなければ逆ルートもおすすめ。長野駅から善光寺までは徒歩でも30分程度なので、天気がよければのんびり歩くのもいい。



長野駅からバスで戸隠神社奥社入口へ。ここから奥社まで続く参道は、凜とした空気が張り詰める神聖な場所。随神門(ずいしんもん)から先の杉並木を過ぎると参道は登り坂になり、階段の先に「戸隠神社奥社」が見えてくる。帰りは随神門で参道を離れ、鏡池まで遊歩道を歩く。赤い鳥居が連なる天命稲荷神社を過ぎると「鏡池」はもうすぐだ。鏡池で絶景の戸隠連山を満喫したら遊歩道で「小鳥ヶ池」へ。「戸隠神社中社」をお参りしたら「山口屋」で新そばのランチタイム。すぐ近くにある「越後屋商店」では長野の地酒を扱っており、オリジナルのお酒も。この時期ならではのひやおろしをおみやげに買って帰ろう。バスで「戸隠そば博物館 とんくるりん」に向かい、そば打ち体験を。粉を混ぜるところから丁寧に教えてくれ、自分が打ったそばをその場で食べることもできる。そば打ちの道具なども販売しているので、この機会にそば打ちを趣味に加えてみるのもおすすめだ。バスで長野駅に戻り、駅近くのホテルへ。周辺には食事処が集まっているので夕食に困ることはないはずだ。

1.戸隠神社奥社参道の杉並木。樹齢は400年ともいわれ、天然記念物にも指定されている 2.戸隠のそば畑。秋そばの花が見頃を迎えるのは9月中旬~下旬にかけて 3.「山口屋」の忍者そば。特製のくるみ汁と大根のツマが特徴 4.秋限定の日本酒「戸隠山雪中酒ひやおろし 」はまろやかな熟成感を楽しめる 5.秋の鏡池。風がないときにはまるで鏡写しのように紅葉が反射




1.随神門(ずいしんもん)の先に続く杉並木 2.戸隠神社奥社の御社殿 3.茅葺きの随神門。戸隠神社で最も古い建造物と伝わる
とがくしじんじゃおくしゃ
戸隠神社五社の御本社で、天岩戸を開いたと伝わる力の神・天手力雄命(あめのたちからおのみこと)を祭る。開運や心願成就、五穀豊穣、スポーツ必勝などの御神徳(ごしんとく)で知られる。奥社入口から社殿までは約2kmの参道が続き、中ほどに茅葺き屋根の随神門が立つ。その先には樹齢400年を超える杉並木が約500mにわたって続く。
バス停戸隠奥社入口から徒歩35分
長野市戸隠
参拝自由(奥社授与所は9~17時、11月~1月7日ごろは9~16時)
冬期(1月7日ごろから4月下旬ごろ)閉殿
100台(3時間800円)など
とがくしじんじゃくずりゅうしゃ
戸隠神社五社の中で最も古い歴史を持つとされる神社。奥社のすぐ隣に鎮座し、戸隠の地主神である九頭龍大神(くずりゅうのおおかみ)を祭る。水を司る神として古くから信仰を集めており、雨乞いや縁結びなどの御神徳(ごしんとく)で知られる。

奥社本殿から一段下がった場所に鎮座する
バス停戸隠奥社入口から徒歩35分
長野市戸隠
参拝自由(奥社授与所は9~17時、11月~1月7日ごろは9~16時)
冬期(1月7日ごろから4月下旬ごろ)閉殿
100台(3時間800円)など
戸隠の大神様に新そばを献納し、大地の恵みに感謝する伝統行事。期間中は戸隠のそば店を食べ比べる「半ざる食べ歩き」をはじめ、そば道具のお焚き上げ、新そば献納祭、献納そばの提供、落語会、新そば振る舞い会など多彩な催しを実施。戸隠が誇るそば文化を存分に楽しめる。詳細は公式サイトで確認を。

献納祭は戸隠神社中社で執り行われる。2026年は10月30日(金)9時~
天岩戸神話などが残る戸隠山は山岳密教の聖地。古くから多くの修験者が入山し、長野市内の善光寺と戸隠神社奥社とを結ぶ道は「戸隠古道」とよばれる。古道沿いには、戸隠五社巡りの「宝光社」「中社」「火之御子社」「九頭龍社」「奥社」をはじめ、名所・旧跡が点在し、宿坊や戸隠そばの店なども軒を連ねる。たっぷりと時間をかけて古道巡りハイキングもおすすめ。


1.紅葉の鏡池。衝立のようにそびえる戸隠連峰を水面に映す 2.夏の鏡池。早朝などは幻想的な風景に
かがみいけ
戸隠高原にある、エリアを代表する景勝地。風のない日には戸隠連峰の山々が鏡のような水面に映り込み、その名の通り美しい光景が広がる。秋の紅葉はもちろん、春の新緑や夏の深い緑も美しい。戸隠神社各社や戸隠森林植物園などと遊歩道で結ばれており、周辺を巡るトレッキングも楽しめる。



秋の小鳥ヶ池。鏡池とは違った風情を楽しめる
ことりがいけ
森に包まれた静かな池。観光客でにぎわう鏡池とは趣が異なり、穏やかな雰囲気に満ちている。天候に恵まれれば水面越しに戸隠連峰を望み、紅葉が水面に映り込む美しい風景に出合える。畔には東屋があり、ひと休みスポットとしても重宝する。


1.階段を登り切ったところに本殿が立つ 2.境内にある御神木
とがくしじんじゃちゅうしゃ
戸隠神社五社の中心的存在で、天岩戸を開く方法を考えたとされる知恵の神・天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)を祭る。学業成就や商売繁盛などの御神徳で知られる。境内には樹齢700年を超える御神木や樹齢800年を超える三本杉がそびえ、本殿の天井には河鍋暁斎が描いた「龍の天井絵」を復元した作品も見られる。
JR長野駅からバスで約1時間、戸隠中社下車徒歩1分
長野市戸隠中社
参拝自由(授与所9~17時)
参拝自由(授与所9~17時)
115台


忍者そば2280円。かすみがけになっている大根のツマとそばを、くるみつけ汁で食べるのが特徴。野菜や巻物の天ぷらも付く
とがくしそば やまぐちや
戸隠神社中社近くに店を構える戸隠そばの老舗。伝統の手打ち技術と自家挽きの新鮮なそば粉を生かし、香りや食感を大切にしたそばが自慢。そばソフトクリームやプリンなどのそばスイーツも人気だ。店内の土産処では戸隠そばや戸隠竹細工、創業77周年記念のオリジナル七味などを販売。

店内は広々としており、戸隠のそば店では最大規模


1.戸隠産の酒米「ひとごこち」を100%使った店オリジナルの特別純米酒「戸隠乃舞」720㎖2200円 2.戸隠神社中社境内の雪室で約3カ月熟成させるひやおろし、「戸隠山雪中酒」720㎖2000円
えちごやしょうてん
戸隠神社中社の参道沿いにある昔ながらの酒店。季節ごとに蔵出しされる日本酒を中心に、信州のさまざまな酒を取りそろえる。好みを伝えればおすすめの酒を案内してもらえるので、戸隠ならではの一本を探してみよう。


1.戸隠バードライン沿いに立つ大きな建物 2.店内ではそば打ちに必要な道具も販売 3.戸隠そばに欠かせない竹ざる6600円~
とがくしそばはくぶつかん とんくるりん
戸隠のそば文化を「知る・打つ・食べる」のすべてで体感できる施設。館内には戸隠そばの歴史や道具を紹介する博物館や手打ちそば食堂、土産処などがある。戸隠流そば打ち体験は、ひとりで参加できるパーソナルクラスもある。戸隠産のそば粉を使ってそばを打った後は、打ちたて、ゆでたてを味わえる。
JR長野駅から車で40分
長野市戸隠3018
10~16時(食堂は15時LO。そば打ち体験受付は~14時)
水曜(6・9月は火・水曜)、冬期
60台
のし棒1本のみで打ちあげる「一本棒丸延し方法」が戸隠流の特徴。2人前のそば打ちを体験できる「ひとりでしっかり・パーソナルクラス」は、所要60分。打ち終わったそばをその場で食べるなら、プラス30~60分は見ておきたい。エプロンレンタルは別途100円。
体験で打つのは、戸隠産のそば粉を7割使った七三そば。こね鉢で粉を混ぜ合わせてから水を加え、ほろほろになるまで混ぜてゆく

ほろほろになった生地をひとつにまとめ、体重をかけながら生地を前に押し出すようにこねる。耳たぶ程度の柔らかさになったら、丸くまとめる

のし板に打ち粉をふり、のし棒で丸く延ばしていく。最初は中央の部分に厚みを残すのがコツ。直径30cmほどまで延びたら、のし棒に巻き付けながら直径50cmほどになるまでさらに延ばす

丸くのした生地を折りたたんで、上に駒板を当てて切っていく。包丁の中央を持ち垂直に当て、包丁を内側に傾けることで駒板を少しずつずらすのがコツ。慣れてくるとリズミカルに切れるようになるから楽しい



1.ゆったりとしたセミダブルルーム。このほか、シングル、ダブル、ツインなどの客室がある 2.男性用大浴場。サウナや水風呂も備える 3.バイキングの朝食では、そばやおやきなど長野の名産品も楽しめる
ほてるながのあべにゅー
JR長野駅と善光寺の間という便利な立地。宿泊者専用の大浴場にはサウナも備え、足を伸ばして旅の疲れを癒やすことができる。1階には1万冊を超えるコミックをそろえた無料図書室「Library TIME」もあり、客室への持ち込みも可能。朝食は地元食材や郷土料理を取り入れた地産地消のバイキングを。
JR長野駅から徒歩7分
長野市南千歳2-8-5
シングルルーム6300円~
IN15時/OUT10時
9台(1泊1000円)

2日目は東山魁夷コレクションが充実している長野県立美術館からスタート。本館と併設の東山魁夷館(ひがしやまかいいかん)では、いずれも年4回ほどのコレクション展を行っており、見ごたえ十分。建物自体もみどころなので、たっぷりと時間をとって見学したい。ここから善光寺へは歩いてすぐ。国宝の本堂や山門からの眺めなどを楽しみながらお参りしよう。山門から先は表参道が延び、仁王門までの仲見世通りにはそば店や土産店などが軒を連ねる。老舗そば店でのランチや、七味唐辛子の老舗の本店などを訪ねながら、そぞろ歩きを楽しもう。

1.参拝者が絶えない善光寺。国宝の本堂は内部も拝観できる 2.山門から仁王門方面を望む。仲見世通りの両側には土産店などが並ぶ 3.長野県立美術館 東山魁夷館にある東山魁夷《緑響く》。長野県の蓼科高原を描いたもので、存在感のある白馬が目を引く 4.仲見世通りにある「丸八たきや」の天ざる 5.八幡屋礒五郎 本店では、ここでしか買えないオリジナルアイテムも揃う



1.東山魁夷の絶筆となった《夕星》(長野県立美術館 東山魁夷館蔵)。魁夷の命日が5月6日であることから、春のコレクション展で展示されることが多い 2.東山魁夷館の展示室。常設展示はなく、年4回展示替えがある 3.ミュージアムショップで見つけたオリジナルトートバッグ2200円 4.東山魁夷作品をモチーフにした一筆箋各550円
ながのけんりつびじゅつかん
善光寺の東隣、城山公園内に立つ美術館。「ランドスケープ・ミュージアム」をコンセプトに、周囲の景観と調和した開放的な空間が広がる。長野県ゆかりの作家の作品や信州の風景を描いた作品などを収蔵するほか、日本画家・東山魁夷の作品を980点余り収蔵する東山魁夷館を併設。広々とした屋上広場「風テラス」からは善光寺本堂を望むこともできる。

水辺テラスから見た東山魁夷館。建物そのものもみどころのひとつ
JR長野駅からバスで約15分、「善光寺北」下車徒歩3分
長野市箱清水1-4-4
コレクション展700円(企画展は別途。展示により異なる)
9~17時(展示室最終入場16時30分)
水曜(祝日の場合は翌平日)
なし(周辺の有料駐車場を利用)


1.山門から見た国宝の本堂 2.内陣のお戒壇巡り入口。ここから先は暗闇の世界に 3.外陣に鎮座する「びんずる尊者像」。自分の身体の悪い部分と同じ場所をなでると治るという信仰から「撫仏(なでぼとけ)」として親しまれている
ぜんこうじ
約1400年にわたり人々の信仰を集めてきた古刹。御本尊は一光三尊阿弥陀如来(いっこうさんぞんあみだにょらい)で、特定の宗派に属さない無宗派の寺として広く知られる。現在の本堂は江戸時代中期の1707年に再建されたもので、東日本最大級の木造仏教建築で国宝に指定されている。内陣では御本尊の真下を通る暗闇の回廊を歩き、「極楽の錠前」に触れる「お戒壇巡り(おかいだんめぐり)」も体験できる。
JR長野駅からバスで約15分、「善光寺大門」下車徒歩5分
長野市大字長野元善町491-イ
境内自由、内陣券一般800円ほか
境内自由 ※内陣はお朝事の1時間前~16時30分(季節により閉館時間変更あり)
無休
周辺に有料駐車場あり(2時間600円~)
善光寺には39の宿坊があり、宿泊も可能。それぞれに御堂があり、住職が参拝者をもてなしてくれる。精進料理をはじめ、宿ごとに趣向をこらした宿坊料理もお楽しみだ。宿泊は基本的に2名からで1名の場合は要相談。1泊2食付1万3200円~(2名利用時の1名料金)。昼食の提供も行っており2750円~。詳細は善光寺宿坊組合(☎026-237-7676)に問合せを。



人気の天ざる1680円。つゆのほか、とろろも付く
まるはちたきや
大正7年(1918)創業、善光寺仲見世通りに店を構える老舗。2階の蕎麦処では、長野県産の玄そばにこだわり、粗挽き粉も使った風味豊かな手打ち二八そばを味わえる。1階は土産処で、国産の食材を使った手作りおやきや、白餡ときな粉クリームを包んだ人気の「きなこもち」などを販売。

活気ある仲見世通りに立つ老舗。食事をすれば土産の割引サービスも
JR長野駅から徒歩30分
長野市元善町482
10時30分~15時(そばは売り切れ次第終了。1階土産処は9~17時)
無休
30台(1回500円)


1.おなじみ「七味唐からし」の善光寺参り缶540円。「牛にひかれて善光寺」の説話が描かれたもので善光寺境内地だけの限定販売 2.香り高い国産柚子果皮を贅沢に使ったゆず七味713円 3.カスタムブレンドでは、約40種類の素材から自由に調合してくれる。最初はバランスのよいレシピの「おすすめ調合コース」1100円~から選ぶのがおすすめ 4.調合した七味は袋に詰めてくれる。別途、空ビン220円や空缶165円もある
こんげん やわたやいそごろう ほんてん
善光寺表参道に店を構える290年の歴史を誇る老舗七味唐辛子店の旗艦店。定番の「七味唐からし」をはじめ、八幡屋礒五郎が手がける数多くの商品を取りそろえる。好みに合わせて七味を調合してもらえる「カスタムブレンド」はぜひ試してみたい。七味素材を生かした菓子やコスメなどもあり、お土産探しに必ず立ち寄りたい一軒。

店先の大きな唐辛子が目印




戸隠では、紅葉の遊歩道や鏡池の絶景、新そばのそば打ち体験など、秋らしい情緒を満喫することができた。天野岩戸の伝説が息づくパワースポット、戸隠神社5社のうちの3社を巡れたことも、旅の充実感につながっている。2日目の国宝善光寺やその門前町、東山魁夷の世界が広がる美術館など、長野市内の王道コースをゆっくりと回れたのもよかった。旅の食事は大好きなそばにこだわり、この時期ならではの新そばを満喫することができた。一緒に注文した「ひやおろし」が、秋の旅に彩りを添えてくれたのも忘れられない思い出だ。