
絶景と名物グルメを堪能し、阿蘇の山々に抱かれた宿坊で、写経や読経で自分と向き合い、心を整える旅へ。坊守がつくる大地の恵みいっぱいの創作精進料理で、体もふっと軽くなりそう。翌日は、話題の道の駅で買物やそば打ち体験を楽しみ、立ち寄り湯で癒しのひとときを楽しもう。



草千里ヶ浜や阿蘇火口見学はもちろん、徒歩移動が多いので、スニーカーなど歩きやすい靴がおすすめ。駅や観光地にタクシーは常駐していないが、電話して呼ぶことは可能。宿坊では住職との語らいも貴重な体験、事前に聞いてもらいたい話などを頭の中で整理しておくのも良い方法。写経はゆっくりと無になって書きたいので、時間的な余裕をもってチェックインしよう。帰りの空港行きリムジンバスの最終便は15時台なので気をつけて。



最初に訪れるのは、現在も活動を続ける「阿蘇中岳火口」。想像以上の迫力で、モクモクと立ち上る噴煙はまるで別世界だ。活火山を間近で見た感動を目に焼き付けながら「草千里ヶ浜」へ向かう。馬が悠々と歩き、のどかに草を食む姿が印象的な大草原では、大自然を体いっぱいに感じ、旅の開放感に浸れるだろう。駐車場エリアには、阿蘇火山博物館や人気の飲食店などが並び、賑やかな雰囲気。熊本名物のあか牛を使ったメニューや阿蘇のおいしい牛乳を使ったソフトクリームなどを味わいたい。草千里を満喫したら、宿泊先の「了廣寺宿坊」へ。創設は約180年前、本堂の装飾や阿弥陀如来立像などは当時のままだとか。静かな本堂で心を無にして一文字一文字、経文を白い紙に写していく時間は、自分と真摯に向き合い、何か忘れかけたものを呼び戻してくれそう。夕食は坊守(ぼうもり)が心をこめて作る地元の野菜を使った彩り豊かな創作精進料理で1日を締めくくろう。

1.標高約1100mの高さにある大草原「草千里ヶ浜」 2.「douce Nucca」で一番人気のあか牛を使ったバーガー 3.写経体験。写経専用の紙と筆ペンで阿弥陀仏の誓いである「三誓偈(さんせいげ)」を書き写す 4.「douce Nucca」で販売している阿蘇をイメージしたオリジナルグッズ 5.「了廣寺宿坊」のウェルカムティー。甘いぜんざいに塩昆布が添えてある



第1火口。噴煙や溶岩、火口壁など、迫力ある風景を楽しめる
あそなかだけかこう
世界最大級のカルデラの中央にそびえる阿蘇五岳(根子岳・高岳・中岳・烏帽子岳・杵島岳)の中央にあり、古来から聖なる場所とされ現在も活発な活動を続けている中岳火口を気軽に見学できる。噴火口の直径は600m、深さ130m、周囲4kmの巨大なもので、噴煙を噴き上げるダイナミックな光景を見学できる。 ※火山活動により立入規制がかかる場合あり
バス停「火口」から徒歩すぐ。シャトルバスは1日10便運行。
熊本県阿蘇市黒川
9〜17時(季節により変動あり)
無休
65台


噴煙を上げる阿蘇中岳火口が見渡せる絶好のロケーション。春から秋は、放牧された馬が悠々と歩く姿や草を食む牧歌的な風景を楽しめる(馬への接近、接触は禁止)
くさせんりがはま
標高約1100m、噴煙を上げる阿蘇中岳を望みながら、馬が放牧された広大な草原をのんびりと散策できる。緑鮮やかな夏、黄金色に染まる秋、白銀の幻想的な冬と、四季それぞれに美しく、馬がいる牧歌的な光景ものどか。駐車場エリアのレストランやカフェ、おみやげ店のほか、阿蘇火山博物館にも寄ってみよう。


1.熊本名物のあか牛を使った「ヌッカバーガー」2360円(スープ付) 2.「くまっちゃラテ」900円。抹茶ラテの上にクマの形の抹茶シャーベットをオン 3.熊本名物「あか牛」がのった「あか牛丼」2950円(お吸い物付) 4.草千里ヶ浜の正面にあり、絶好のロケーションを誇る広々とした店内
ドゥース ヌッカ
草千里ヶ浜の駐車場エリアのほぼ中央、3階フロアまである広々としたレストラン。阿蘇の食材を使った洋食メニューを中心に、あか牛のハンバーガーやステーキ、ハンバーグが人気。窓越しに草千里ヶ浜や阿蘇の山々を眺めながらゆっくり食事ができる。店内にはテイクアウトやオリジナル雑貨などのショップコーナーもある。
草千里阿蘇火山博物館前バス停下車、徒歩1分
熊本県阿蘇市草千里ヶ浜2391-15
レストラン11時~15時30分(LO)、ショップ10~17時、テイクアウト10時~16時30分 ※天候により変動あり
不定休
有料あり


1.草千里ヶ浜の雄大な景色を眺めながらこだわりのコーヒーを堪能 2.(手前)濃厚なエスプレッソとミルクのまろやかな甘みがマッチしたエスプレッソラテ600円、(奥)エスプレッソにデトックス効果が期待できる竹炭パウダーを混ぜたチャコールラテ 3.ASO MILKの一番人気、ミルクソフト(カップ500円、コーン550円)
にゅーくさせんり
草千里ヶ浜の駐車場エリアにあり、洗練された空間にみやげ店やカフェ、食堂などがある。カフェの草千里珈琲焙煎所は、オランダの高級マシンで淹れたエスプレッソのほか、ドリップコーヒーやラテ、イチゴミルクなどこだわりのドリンク揃い。また、阿蘇の搾りたてミルクで作られた特製アイスが人気の「ASO MILK」のテイクアウトコーナーもある。


1.2016年の熊本地震後、築180年の本堂の隣に半壊した建物の一部を改装し宿坊をオープン(右が本堂) 2.3部屋とバス・トイレ付の広々とした空間 3.法要の後に出されるお斎をベースに坊守が作る創作精進料理(写真は松花堂コース、季節で内容が変わる)。素材は先代住職が近くの畑で丹精込めて育てた野菜が中心 4.煮物に入っている大きな厚揚げは開祖の親鸞聖人の好物に由来し、真宗大谷派の精進料理の特徴。手作りで、弾力がありジューシー 5.小林智征(こばやしともゆき)住職と坊守で料理担当の光里(あかり)さん
りょうこうじしゅくぼう
阿蘇山を間近に眺め、のどかな田園風景の中にある1日1組限定の宿坊。住職と坊守(ぼうもり)を務める小林ご夫婦の温かいもてなしと仏教体験に加え、地元の野菜を使った彩り豊かなコース仕立ての創作精進料理や、朝食に出される住職自らが焼いたビーガンパンなど、伝統にとらわれない現代人の嗜好に合わせたもてなしが人気。
阿蘇白川駅より徒歩で約18分
熊本県阿蘇郡南阿蘇村久石427-1
15時(最終チェックイン18時)/10時
1泊2食付2万2000円〜(予約はWebのみ)
2台


了廣寺は、真宗大谷派(浄土真宗)の東本願寺の流れをくむお寺です。とても静かな環境で、耳を澄ますと鳥の声、虫の音、風のざわめきが聞こえてきます。短い時間ではありますが、静寂の中で、読経や写経を通じて仏の教えにふれてみると心が落ち着きます。日常から少し離れ、自分自身と向き合いながら特別な時間をお過ごしください。(小林智征住職)

仏教の経典(お経)を一文字一文字、心を込めて書き写すことで、仏の教えを学び、功徳(ご利益)を積むための仏教修行のひとつ。心を無にして書くことで、集中力を高め、心を整える。了廣寺では、写経体験用に1時間ほどで書ける短めの偈文「三誓偈」を用意。「三誓偈」とは、仏説無量寿経の中に含まれる五字四十四句の偈文で、阿弥陀仏はすべての人を救うため、四十八の本願をおこし、心貧しく悩み苦しむ人々を救うことができなければ決して仏にはならないと重ねて誓ったという。
【所要時間】約1時間 【時間】チェックイン後から夕食までの時間帯、希望があれば翌朝の体験も可 【料金】1名1500円
読経とは、仏教の経典(お経)を声に出して読む宗教的行為全般。一定のリズムと抑揚を伴うため、心を集中させ、雑念を払うのに役立ち、声を出すことで、日々の悩みや不安を一時的に忘れさせ、現代人のストレス軽減につながる。了廣寺の勤行(おつとめ)は、お夕事(ゆうじ)は午後6時から、お朝事(あさじ)は午前6時から行っており、宿泊者も見学または一緒にお経を唱えることが可能。
【所要時間】約10分 【時間】18時〜、翌朝6時〜 【料金】無料

お寺の朝は早く、6時から住職の勤行が始まるが、宿泊者は朝食まで自由な時間を過ごせる。鳥のさえずりが聞こえる境内で深呼吸するだけでも、気持ちがすっきりとする。夕食と同様、野菜をふんだんに使った朝食も坊守の手づくりで、住職が担当する焼き立てパンは必ず味わいたい。宿坊を後にして最初に向かうのは水源が多い阿蘇の中でも有名な白川水源。秋は紅葉もみどころだが、何より湧き出る水の美しさとおいしさに感動する。道の駅まで足をのばしたら、のどかな田園風景と阿蘇の稜線を眺める絶好のロケーションを堪能し、南阿蘇限定の商品を手に入れよう。ランチは、道の駅内のそば道場でそば打ちを体験。香りの高い南阿蘇のそば粉を阿蘇の水でこねて、のばして麺にしていく行程は、指導員がやさしく教えてくれるので初めての人でも安心。何より自分で打ったそばは格別。お腹が満足したら、眺めのいい温泉に浸かり、旅の疲れを癒やして帰ろう。

1.秋は紅葉が美しい、白川水源からの水が流れる白川 2.南阿蘇そば道場では自分で打ったそばを楽しもう 3.宿坊の手作りパン。パンの種類は10種類ほどあり、この日の食パンはプレーンとクルミ入り 4.水車小屋のそばにある南阿蘇そば道場


1.静かな朝の時間、庭を眺めながら住職と語り合うのも豊かな体験 2.希望があれば、朝からの写経体験も可能 3.温野菜やくるまぶのオニオンスープなど、朝もボリューム満点
夕食同様に、朝食も季節の野菜をふんだんに使ったボリューム満点の内容。それに加えての名物が、住職手づくりの焼き立てパン。境内の一角にパン工房があり、熊本県産小麦(全粒粉)と南阿蘇の地下水を使って食パンを毎朝焼いている。もちろん、卵、乳製品などは一切使用していないが、もちもちとした食感と小麦本来の風味が生きている。外国人客にも「ビーガンパン」として人気だ。


1.水が勢いよく湧き上がる様子が見られる水源 2.水源横の水汲み場で備え付けのひしゃくで水をすくってボトルへ。水源横には水神様を祀る神社もあり、秋は紅葉もみどころ
しらかわすいげん
阿蘇には良質な水が湧き出る湧泉がいくつもあるが、その中でも代表的な湧泉がここ。環境省の「名水百選」にも選ばれていて、四季を通じ、水温14度の水が毎分60トンも湧き出ている。水源に溜まった水は自由に飲むことが可能で、マイボトルで持ち帰る人も多い(空のボトルも購入可能)。
南阿蘇鉄道 南阿蘇白川水源駅から徒歩約15分
熊本県阿蘇郡南阿蘇村白川2040
環境保全協力金100円
8〜17時(季節により変動あり)
無休
200台


1.背景には阿蘇の大パノラマが広がる 2.手積みした実で作った木いちごソース150g580円 3.一番人気のブルーベリーケーキ650円 4.あか牛専門店手作りのハンバーグ2個入り1300円
みちのえき あそぼうのさとくぎの
南阿蘇村久木野地区に位置する複合観光施設・道の駅で、県内屈指の人気の道の駅。南阿蘇の豊かな大地と水によって育まれた農畜産物を販売する物産販売所「旬鮮あじわい館」のほか、レストランや芝生広場、そば打ち体験ができる「南阿蘇そば道場」などがある。


1.こね鉢の中に南阿蘇産のそばを石臼で挽いたそば粉と小麦粉を混ぜ合わせ、水を少しずつ入れ混ぜ合わせる 2.伸ばし板に取り粉を引いて、棒で徐々に薄く伸ばしていく 3.伸ばしたものをそば切り包丁で幅2mm程度に切っていく 4.作ったそばは厨房で料理してくれる。持ち帰りの場合は別途容器代440円
みなみあそそばどうじょう
水に恵まれた南阿蘇は昔からそば作りが盛んな地域。その南阿蘇で精魂込めて育まれたそばを自社工場の石臼で丹念に挽いたそば粉を使って、本格的なそば打ち体験を気軽に楽しめる施設。自分で作ったそばは南阿蘇の美しい風景を眺められる食事コーナーで食べる事ができ、打ちたてのおいしさを味わえる。食事だけの利用も可。
南阿蘇鉄道中松駅から徒歩35分
熊本県阿蘇郡南阿蘇村久石2801道の駅あそ望の郷くぎの内
1〜2名3960円(2名分の麺)
体験受付10時〜15時30 分。所要約40分
毎月第2水曜(不定休)
260台


1.窓の外に阿蘇の山並みと田園風景が広がる大浴場 2.湯上りには阿蘇の大自然を眺めながらテラス席でのんびり
みなみあそくぎのおんせんしきのもり
阿蘇の雄大な景色を眺めながらとろっとした泉質が特徴の“美人の湯”を堪能できる立ち寄り温泉。30年前のオープン以来、地元の人から親しまれている。湯上りには、大浴場に隣接する宿泊棟1階のフロントでドリンク類(400円〜)とソフトクリーム(400円)をテイクアウトでき、阿蘇の風景を望むテラス席でいただける。



1.熊本城をモチーフにデザインされた阿蘇くまもと空港の新旅客ターミナルビル 2.熊本の名店、黒亭(こくてい)ラーメンの2食入り950円 3.林檎の樹の「究極のめろんぱん」1個335円 4.ご飯のお供に。徳丸漬物「生姜の醤油漬け」と「高 菜の油いため」各50g470円 5.デコポンジュース378円
あそくまもとくうこう
2016年の熊本地震からの復興のシンボルとして、2023年に新旅客ターミナルビルが開業、さらに2024年10月「そらよかエリア」が開業し、商業施設などが増設された。おみやげショップも「ASORA」など多数あり、飲食店も10店舗以上と充実。
阿蘇くまもと空港バス停から徒歩すぐ
熊本県上益城郡益城町大字小谷1802-2
7時30分~21時30分(店舗により異なる)
無休(店舗により異なる)
2379台(場所によって30分無料または60分無料)


阿蘇の雄大な風景を間近に感じる了廣寺宿坊。住職・坊守を務める小林ご夫婦の温かいもてなしとテーブルいっぱいに並んだ自然の彩りが美しい料理の数々、そしてお香の香りが漂う静寂な本堂での自分と向き合う時間は、日頃の喧騒を忘れさせてくれる心の旅になること間違いなし。また、ペットボトルで持ち帰った白川水源の水で淹れたコーヒーはとてもまろやかで、阿蘇の人々のやさしさを思い出すことだろう。