
『源氏物語』の舞台は、京の都と宇治が中心だが、湖国・近江は、作者である紫式部がお参りに訪れ物語の着想を得たと伝わる重要な場所。ゆかりの地を訪ね、平安の雅にふれてみよう。

土佐光起筆「紫式部図」(石山寺所蔵)
びわ湖に映る月を眺め『源氏物語』を起筆
いしやまでら
平安時代、京都の清水寺、奈良の長谷寺と並んで「三観音」として信仰を集めたのが、近江の石山寺。一条天皇の中宮(皇后)彰子から読んだことのない珍しい物語を、と頼まれた紫式部は、祈願のため石山寺を訪れて7日間参詣。びわ湖に映る月を眺めて物語の情景がひらめき、物語を綴り始めたと伝わる。紫式部ゆかりの歌を綴った、紫式部開運おみくじ200円。安産のお守りにもなる「犬吉みくじ」は全4色で各600円。


げんじのま
紫式部が『源氏物語』を起筆したと伝わる部屋。現在、有職人形司による紫式部の御所人形が置かれている。

けいかいせき
岩の上に観音様を祀ってお堂を建てたのが、石山寺のはじまりで、名の由来。大きな石が沸き立つようにそびえ、迫力満点。

ほんどう
滋賀県最古の木造建築であり、国宝。本尊の勅封秘仏・如意輪観世音菩薩は、安産・福徳・縁結び・厄除けなどのご利益を授けてくれるという。

つきみてい
紫式部が舟で下った瀬田川やびわ湖を一望できるスポット。近江八景「石山の秋月」を象徴する場所。
紫式部の父・叔父・異母兄弟や藤原道長と縁深い古刹
そうほんざん みいでら
天台寺門宗の総本山であり、平安時代、朝廷や貴族から崇められた。金堂(国宝)には、藤原道長が奉納したと伝わる弥勒菩薩を祀る。紫式部の叔父と異母兄弟が僧侶を務め、父の藤原為時はこの寺で出家した。


極楽浄土にいるとされるオウムがモチーフの土鈴・浄土の鳥1000円
かんのんどう
西国三十三所観音霊場の第14番札所。本尊の秘仏・如意輪観音を祀る。


水に浸すと文字が浮かび上がる「鐘みくじ」200円
みいのばんしょう
近江八景のひとつとして名高い、三井の晩鐘。実際に撞いて音色を聴ける。
都と近江の国をむすぶ交通の要衝
おうさかのせき
京の都と近江の国をつなぎ、多くの旅人が往来した逢坂山の要衝跡と伝わる。『源氏物語』十六帖・関屋では、主人公の光源氏が石山寺に参詣する際にこの関を通り、かつて恋した空蝉(うつせみ)の一行と偶然出会った。

平安前期に歌人・蝉丸の詠んだ歌「これやこの 行くも帰るも別れては 知るも知らぬも 逢坂の関」も有名

逢坂の関は、平安時代には、鈴鹿(三重)、不破(岐阜)と並ぶ三関に名を連ねた
越前や石山詣へ舟旅の起点となった浜
うちではま
京の都を発った紫式部は、逢坂の関を越えて近江の国へ。びわ湖の浜辺から舟に乗り、父の越前赴任に同行し、石山寺にも参詣した。現在はなぎさ公園として整備され、市民や観光客の憩いの場となっている。

浜辺からは紫式部が生きた時代と変わらない比叡山の稜線が望める

清少納言の『枕草子』にも「浜は、打出の浜」と記されている