穏やかな気候の南房総をめぐるドライブひとり旅。点在するパワースポットを巡って運気をアップし、宿坊では自分の内面と向き合う。新鮮な海の幸ランチや、居心地のよいカフェでのんびりする時間も忘れずに。東京から車で約1時間、忙しい日常から離れ、疲れた自分をメディテーションしよう。
●首都圏から南房総へのアクセス
首都高ほか各高速道路ICから富津館山道富津金谷ICへ。都心からは車で60～90分ほど。
●各地から南房総へのアクセス
主要都市からの便が発着する羽田空港を起点にしてレンタカー利用がおすすめ。羽田空港から富津館山道富津金谷ICまで車で約50分
南房総エリアは公共交通が不便なことが多いので、車での移動が前提。公共交通を利用する場合は、JRやバスの時刻表を確認して、事前に綿密なプランを立てておきたい。館山エリアでは館山駅でレンタサイクルを調達するのものおすすめ。鋸山にある「乾坤山日本寺」の境内はかなりの急斜面にあり、階段でのアップダウンを覚悟。スニーカーなど歩きやすい靴で挑もう。「リトリート宿坊 自在堂 南房総」では食事が出ないので、弁当などを持ち込むか外に食べに出ることになる。朝のお勤めに参加すると朝がゆ用の米をもらえるので、ぜひ参加して仏教の入口を体験したい。
魚介ランチと絶景の寺
のどかな海岸線ドライブ
富津金谷ICで高速道路を下りたら、海辺の複合施設「ザ・フィッシュ」でランチタイム。天井が高く開放的な空間で、新鮮魚介をはじめ地元の食材を使った多彩な料理を味わえる。窓の外に広がる東京湾を眺めながら、南房総の豊かな食事を満喫しよう。食事の後は、旅の最初のパワースポット「乾坤山日本寺」へ。この寺は、鋸山の南斜面一帯を境内にもつ関東最古といわれる勅願所で、豊かな自然のなかに大仏様や百尺観音像などが点在する。崖の上に突き出た「地獄のぞき」などから絶景も楽しめる。境内に張り詰めた凜とした空気のなか、急斜面の階段を上り下りしながら過ごすひとりの時間もまた格別。たっぷり2時間ほどかけて、地域屈指の古刹をお参りしたい。ここから宿泊地までは、右手に東京湾を望みながら内房の海岸線を南下する。走りやすい道ではあるが、道幅の狭いトンネルが数カ所あるので、周囲の車に注意しながらのんびりとドライブを楽しもう。
1.日本寺境内にある地獄のぞき 2.お願い地蔵尊に無数に奉納されたお地蔵様。名前を書き、願いを唱えながら納めると願いがかなうとされる 3.レストラン「ザ・フィッシュ」で新鮮魚介のランチを満喫 4.「リトリート宿坊 自在堂 南房総」の木製トレーラー型タイニーハウス
富津館山道富津金谷IC
車で3分 （国道127号）
内房の海を眺めながら海鮮ランチを味わう
1.港町のペスカトーレ1980円。漁師町ならではの海鮮ベースの濃厚トマトパスタ 2.高い天井と壁一面の窓ガラスの店内は圧倒的な開放感
レストラン ザ・フィッシュ
れすとらん ざ・ふぃっしゅ
東京湾フェリーの発着場である金谷港にある複合施設「ザ・フィッシュ」のレストラン。朝どれの新鮮な地魚を使った魚介料理が人気で、各種セットメニューや海鮮丼のほかピザやパスタなどの洋食メニューも豊富。刺身盛りあわせなどのアラカルトメニューも。
車で3分 （国道127号）
地獄のぞきや巨大な石仏、広大な境内を散策
1.日本寺へのアクセスは「鋸山ロープウェー」が便利。往復1200円 2.かつての石切り場跡に彫刻された百尺観音 3.山頂付近にある地獄のぞき。柵があるが足がすくむ 4.高さ31mの大仏様。1783年に大野甚五郎が3年かけて彫刻したものが原型
乾坤山日本寺
けんこんざんにほんじ
神亀2年（725）、聖武天皇の勅詔を受けて行基菩薩によって開かれた関東最古の勅願所。約10万坪という広大な境内には2600段以上の石段で結ばれた遊歩道があり、百尺観音や磨崖大仏などのみどころが点在する。山頂エリアにある地獄のぞきもみどころのひとつ。崖からせり出した岩の上から谷を見下ろせる眺望スポットで、柵があるとはいえかなりスリリング。慎重に岩の先端付近まで進んでみよう。
境内の回り方
乾坤山日本寺の入口は全部で5カ所あるが、ロープウェーでアクセスするのがおすすめ。鋸山ロープウェー山頂駅で降りたら山道を少し歩いて下り、西口管理所から日本寺境内に入場する。百尺観音と山頂展望台、地獄のぞきを見学したら、無数の羅漢像が並ぶ千五百羅漢道を下る。所々に階段があるので注意して歩こう。大仏口管理所から大仏広場まではゆるやかな舗装路となる。近くには2025年に落慶したばかりの仏舎利塔や法堂（本堂）もあるので足を延ばしておきたい。帰路は大仏口管理所から急階段を延々と上る。西口管理所で境内を出て、再び鋸山ロープウェー山頂駅へ。大仏口管理所からは20分は見ておきたい。
車で30分 （国道127号）
ミニマルな空間でひとり時間と向き合う
1.宿泊は快適なタイニーハウスで。国産の無垢の杉材が贅沢に使われた2台のトレーラーが並ぶ 2.タイニーハウス内部。シャワーやトイレ、冷暖房を備え、キッチンでは自炊もできる 3.夜には焚き火もできる。薪は持参が必要
リトリート宿坊 自在堂 南房総
りとりーとしゅくぼう じざいどう みなみぼうそう
海岸近くに立つ妙福寺による宿坊施設。無人のセルフチェックインなど、自分に向き合う時間を過ごすための工夫が凝らされたタイニーハウスに宿泊しながら、本堂などで催される朝のお勤めや瞑想会などに参加できる。曜日限定の各種体験メニューもある。
JR富浦駅から車で5分
南房総市富浦町南無谷122-16
1泊素泊まり1万3800円～
2台（1室1台まで。複数台の場合は第二駐車場にも駐車可）
MEMO
食事は出ないので、外食またはスーパーマーケットやコンビニなどで惣菜や弁当を買う必要がある。自炊設備も整っているが塩以外の調味料は持参しよう。朝のお勤めに参加すると朝がゆ用のお米をもらえる。シンプルな朝食で1日をスタートさせるのもおすすめ。
車で7分 （国道127号）
特注鉄板で焼く名物さんが焼き
1.内房名物「黄金アジ」をフライやなめろう、さんが焼きなど、さまざまに調理してくれる。300g3300円（アジ1gにつき11円） 2.鯵さんが握り8貫1200円などテイクアウトメニューも豊富 3.小さく仕切られた居心地のいいテーブル席。特注の円形鉄板でさんが焼きを焼く
伏姫さんが焼
ふせひめさんがやき
日本でも例を見ない、さんが焼き専門店。さんが焼きとは房総の郷土料理で、魚の身をたたいたものに薬味や野菜を加えて焼いたもの。その日の地魚を、「生さんが」と「焼きさんが」のいずれかで注文できるほか、フライや刺身なども可。定食メニューもある。どれもが化学調味料無添加、アレルギーフリーなので安心して食べられる。クラフトビールや自然派ワイン、千葉の地酒も豊富。
自在堂では、妙福寺の建物を活用した各種体験メニューを用意している。仏教の考え方にふれるいい機会でもあるので、ぜひ参加してみよう。
朝のお勤め
1日の始まりに心を清めて、慈悲心や謙虚さを養う時間。経本を手に住職の読経に合わせて唱え、焼香などを行う。「朝勤（ちょうごん）」ともよばれる。【時間】毎日6時～6時30分、宿泊者限定 【料金】参加無料。
朝の瞑想会
朝のお勤めの後に開かれる瞑想会。瞑想について簡単なレクチャーを受けた後、目を閉じて自分と向き合う。【時間】毎日6時30分～7時、宿泊者限定 【料金】参加3000円
マインドフルネス実践講座
「いま、ここ、わたし」に気づきを向けるマインドフルネスを、実践者である僧侶から学ぶ。感情をコントロールして心穏やかに過ごすためのヒントを教えてくれる。瞑想会の前に参加しておくのがおすすめ。【時間】木曜16～17時（変更の場合あり）、宿泊者限定 【料金】参加5000円
ゆったり寺ヨガ＠妙福寺
穏やかな空気のお寺の施設内で行われる。畳の上で開催されるので、ひと味ちがったヨガ体験ができる。【時間】第2・4土曜15～16時（変更の場合あり） 【料金】参加1500円
朝の始まりはお勤めから。パワースポットで運気アップ
2日目は自在堂のプログラムから1日をスタート。朝のお勤めに続いて朝の瞑想会に参加することで、仏教の考え方にふれながら自分と向き合う時間を確保できる。誰にも邪魔されない貴重な時間を過ごそう。朝食に朝がゆを自炊すれば、宿坊気分がさらに盛り上がる。2日目に訪れるパワースポットは3カ所。崖の中腹に浮かぶ観音堂や平安時代に創建された安房国総社、紀元前創始とされる安房国一之宮と、いずれも地域を代表する社寺ばかり。歴史を感じながらお参りして、境内の厳かな空気を感じ取りたい。朝食は控えめにした分、ランチにはボリュームたっぷりの海鮮丼を。居心地のいいカフェで過ごすのんびりとした時間も、ひとり旅ならではの貴重なひとときだ。
1.「崖観音」からの眺望。眼下には館山の街並みと東京湾の絶景が広がる 2.「妙福寺」の本堂で催される朝の瞑想会。心を無にして自分と向き合う 3.ランチは水産会社直営の「海鮮食堂とみうら亭」で 4.「鶴谷八幡宮」の拝殿に刻まれた龍の彫刻。地域を代表する木彫師、後藤利兵衛橘義光の作
起床後、朝のお勤めと朝の瞑想会に参加
1.朝のお勤めでは、経本を片手に住職の読経に合わせて経を唱える 2.住職と向き合って瞑想体験。座禅を組んでもいいがイスを使ってもOK 3.朝食では朝がゆを自炊。朝のお勤めの後に米が配られる
チェックアウト
車で7分 （国道127号、県道302号（内房なぎさライン））
崖に浮かぶ観音堂から館山湾を一望
1.船形山の崖の中腹に観音堂が浮かぶ 2.観音堂からの風景。穏やかな館山湾が一望できる
崖観音（大福寺）
がけかんのん（だいふくじ）
真言宗智山派に属する寺院で、「崖観音」として親しまれている。船形山の崖の中腹にある祠に刻まれた本尊、十一面観世音菩薩は、地元漁民の海上安全と豊漁を祈願して行基が彫刻したと伝わる。階段を上った先にある観音堂からは、館山湾を一望できる。
車で5分 （県道302号、県道185号）
水産会社直営店でプリプリの海鮮丼を
1.とみうら丼1980円。季節ごと替わる旬の白身魚をはじめ、海の幸がたっぷり 2.150席あるゆったりとした店内。注文はタッチパネルで
海鮮食堂とみうら亭
かいせんしょくどうとみうらてい
富浦ICの目の前、房総の駅とみうら内にある海鮮の店。地魚を使った鮮度抜群の海鮮丼から、豪華な定食メニューまで、房総の海の幸を堪能できる。自家製なめろうメンチや大人気のあつあつアジフライなど、サイドメニューも充実。
車で15分 （国道127号（館山バイパス））
地域最大の祭礼「やわたんまち」の舞台
1.拝殿の彫刻「百態の龍」。館山市指定文化財に登録されている 2.左側が拝殿。境内はおごそかな雰囲気
鶴谷八幡宮
つるがやはちまんぐう
平安初期に安房国の総社として創建。鎌倉時代にこの地に移され、以降はこの地を治めた里見氏や徳川幕府などから崇敬を受けたと伝わる。毎年9月中旬に開催される「安房国司祭 やわたんまち」の舞台としても名高い。拝殿向拝の格天井にはめこまれた「百態の龍」は、安房を代表する木彫師、後藤利兵衛橘義光の作品。
車で5分 （県道302号）
おしゃれなリノベ空間で自家焙煎コーヒーを味わう
1.カヌレ297円、エスプレッソをオレンジジュースで割ったオレンジアメリカーノ550円 2.隣には書店、北条文庫を併設。本を読みながらゆったりと過ごせる 3.店内の焙煎機
ALRIGHT COFFEE ROASTERS
おーるらいとこーひーろーすたーず
古いビルをリノベしたYANE TATEYAMAの1階にある。店内の焙煎機でローストしたコーヒーをはじめ、自家製の焼き菓子などを提供。店内と、隣接する書店、2階にあるラウンジにテーブル席が用意され、思い思いの時間を過ごすことができる。シングルオリジンのコーヒー880円～は、常時10種類ほど用意。
車で20分 （県道302号、国道410号）
金運の神様として話題。地域随一のパワースポット
1.豊かな自然に包まれた社殿。拝殿の奥に本殿が鎮座する 2.ご利益を求めて多くの人が訪れる。金運守、神氣守いずれも初穂料1000円 3.境内にある槙の木の御神木。樹齢約500年を数える
安房神社
あわじんじゃ
安房国の一宮。初代神武天皇が即位した皇紀元年（紀元前660）創始と伝わり、その歴史は2670年を数える。主祭神の天太玉命（あめのふとだまのみこと）が日本の産業創始の神であることから金運の神様として注目されており、日本三大金運神社のひとつに数えられることも。境内には神明造りの本殿・拝殿のほか、天富命（あめのとみのみこと）を祀る下の宮や海食岸をくりぬいて創建された厳島社など、摂社、末社が点在する。
車で30分 （国道410号、国道127号）
富津館山道富浦IC
狭い空間を最大限に利用できるよう工夫が凝らされたリトリート宿坊 自在堂は、自分を見つめ直すには絶好の宿。じっと炎を見つめる夜の焚き火や、心を空にする朝の瞑想など、雑事を忘れて内面と向き合えたのが貴重な経験だった。今回巡ったパワースポットは、どこも観光地の混雑とは無縁の静かな空間で、寺社独特の厳かな空気が感じられた。新鮮な魚介類を存分に味わうことができたのも、海が近い南房総の旅ならでは。最後までひとり旅の寂しさを感じることなく、むしろ、ひとりだからこそ楽しめた有意義な旅となった。
このエリアの宿泊予約はこちらから！（るるぶトラベルサイトへ）
このエリアの前売り電子チケットはこちらから！（JTBのサイトへ）
文・写真：日下智幸 イラスト：玖保キリコ ●掲載のデータは2025年12月現在のものです。料金、営業時間、定休日、メニュー等の営業内容が変更になることや、臨時休業等で利用できない場合があります。 ●掲載の料金は、原則として取材時点で確認した消費税込みの料金です。また、入園料などは、特記のないものは大人料金です。 ●定休日は原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。 ●掲載の利用時間は、原則として開店（館）～閉店（館）です。ラストオーダーや入店（館）時間は、通常閉店（館）時刻の30分～1時間前ですのでご注意ください。ラストオーダーはLOと表記しています。 ●掲載の温泉の泉質・効能等は、各施設からの回答をもとに原稿を作成しています。 ●掲載の宿泊料金は、原則として、シングル・ツインは1室あたりの室料です。1泊2食、1泊朝食、素泊に関しては、1室2名で宿泊した場合の1名料金です。料金は取材時点での消費税およびサービス料込みの価格で掲載しています。入湯税、宿泊税等が課税される地域における諸税は含まれておりません。季節や人数によって変動しますので、お気をつけください。
るるぶ＋
