関西を代表する美食家・門上武司さんが「ひとり京ごはん」を満喫できる店を、朝・昼・夜・カフェの各シーンに合わせて、それぞれ3軒セレクト。京都の多彩な魅力を楽しめる名店揃いです。
門 上 武 司
1952年大阪生まれ。フードコラムニスト。食関係の執筆、編集業務を中心に、プロデューサーとして活動。関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問も務める。一般社団法人全日本・食学会副理事長。
柳が風に揺れる白川の景色が京都らしい雰囲気の丹で朝食を。カウンターはないがテーブルが大きいため、前や横の人もあまり気にならない
1 白川を望む2階で食後のドリンクを 2 自家栽培米はおかわり自由 3 丹後のサバのへしこ焼き、蒸し野菜、季節の和え物などが並ぶ朝食3300円
友人や知人が京都を訪れた際、よく案内するのがこちらの店。一品一品丁寧に作られた、正統派の朝ごはんをおいしくいただけます。
祇園白川
丹後の魅力を詰め込んだ折り目正しい朝ごはん
たん
白川のほとりにたたずむ、名料亭・和久傳(わくでん)の系列店。「丹」が意味する「小さな真心」と、「丹後半島で作られた本当にいい素材を知ってほしい」との思いが店名に込められている。オープンキッチンに臨む席に並ぶのは、体調を整え、心身ともに健康的な1日を始めるための朝食。浅漬けのサバのへしこは炭焼きで香ばしく、蒸した旬の野菜は琴引浜の塩ともろみ味噌を添えて……と、素朴ながら洗練された品々に心躍る。
地下鉄東山駅から徒歩5分
京都市東山区三条通白川橋下ル東側五軒町106-13
朝食8時~・9時~(2部制)、昼食12~14時LO、夕食18~21時LO
月曜(祝日の場合は翌日)、ほか月1回不定休あり
なし
カウンター席:なし
1 分厚いベーコンに驚く店舗限定の三条モーニングセット1480円 2 スタッフの小気味よい仕事ぶりを眺められるカウンター席
数年のご無沙汰を経て再開。円形のテーブルとレトロモダンな印象は変わらず、地元の人たちも観光客も受け入れる懐の深さはさすが老舗の貫禄。
三条堺町
リニューアルした人気喫茶のしゃれたモーニング
いのだこーひさんじょうてん
建物の老朽化により2022年から休業していたが、2024年10月にリニューアルオープンし、朝日が差し込む大きな窓が印象的な空間へと生まれ変わった。店を象徴するカウンターは以前のものを生かしつつ、中央に新たな板を伸張してよりワイドに。重厚な雰囲気に包まれていただくコーヒーは格別な味わい。11時30分まで提供されるしゃれた三条モーニングセットをぜひ味わってほしい。
地下鉄烏丸御池駅から徒歩5分
京都市中京区三条通堺町東入ル桝屋町69
10時〜18時30分LO(ドリンクは〜18時45分LO)
無休
タイムズイノダコーヒ駐車場を利用(店舗利用で1時間無料)
カウンター席:あり(19席)
1 ナポリのバールを思わせる異国情緒に満ちた店内 2 ブレックファストセット980円とカプチーノ580円
エスプレッソコーヒーが何かを知る道標的な一軒。また、食べ物の充実ぶりが楽しい。クロワッサンからホットサンドまで満喫できる。
烏丸御池
本場スタイルのエスプレッソと絶品チキンサンド
イマヤ キョウト アンドコーヒー
朝6時から営業しているイタリアン・バール。ナポリのコーヒー文化に魅了された店主の今井直人さんが、現地スタイルのエスプレッソを提供する。外国人旅行者の意見も参考にしたブレックファストセット(ドリンクは要別注文)は、ハニーマスタード味のチキンサンドが絶品。日本のバール文化に貢献した今はなき大阪の名店、バール・ウーノの精神も受け継ぐ今井さん。明るく迎えてくれる姿に元気をもらえる。
地下鉄烏丸御池駅から徒歩4分
京都市中京区釜座通御池上ル下松屋町726-4
6〜13時、16~20時(日曜は6~13時のみ)
不定休
なし
カウンター席:あり(5席)
1 オーブンで火入れしてうま味を閉じ込めた洋食おがた特製ハンバーグ3570円 2 素材の話に花を咲かせる門上さんと緒方さん 3 東京など遠方から訪れるファンも多い人気店
素材に対して真摯に向き合う、緒方さんの食への探究心には脱帽です。常に進化を続ける、彼の洋食をぜひ京都で体感してほしいですね。
御所南
厳選肉のピュアなうま味が染みわたるハンバーグ
ようしょく おがた
京都屈指の人気を誇る洋食店。緒方博行シェフと生産者との密なつながりによって得た厳選素材で作る料理を、カウンターの洋食割烹スタイルで提供する。ランチでいただきたいのが、ずっしり150gのボリュームもうれしい「特製」の名を冠したハンバーグ。上質な肉だけがもつ澄みきったうま味を、複雑かつ後味が軽やかなデミグラスソースが引き立てる。ランチは11時30分〜、12時〜のみ予約可能。
地下鉄烏丸御池駅から徒歩10分
京都市中京区柳馬場押小路上ル等持寺町32-1
11時30分〜13時30分LO、17時30分~21時LO
火曜、ほか月2回不定休あり
なし
カウンター席:あり(11席)
1 多い日には100食以上注文があるちらし寿司1700円 2 卵の風味を生かした錦糸卵が海鮮のうまさを引き立てる 3 2代目の西村善明さんと、長男の西村健吾さんが丁寧な仕事を行う
ネタやシャリの仕事はきちんとしているのにリーズナブル。客との距離感も絶妙で、温かいもてなしをしてくれる、理想的な街の寿司店です。
烏丸御池
6つのネタをぎっしりと錦糸卵も美味なちらし寿司
すしぜん
昭和14年(1939)創業の寿司店が繰り出す名物は、マグロ、ハマチ、タイ、タコ、イカ、アナゴを酢飯の上に敷き詰めたちらし寿司。厚めに焼いたふわふわ食感の錦糸卵に甘さを控えた酢飯、香ばしい海苔とともに生み出される渾然一体の味わいは、一度食べたら忘れられないおいしさだ。甘く煮詰めたアナゴをとことん楽しめる穴子ちらし2000円も数量限定の人気メニュー。アットホームな店の雰囲気も心地いい。
1 フォカッチャやスープなどが付くタラコスパゲッティ定食1400円 2 ティラミス620円やエスプレッソ500円もおすすめ 3 気軽に食事を楽しめるカウンター席でランチを
イタリア食堂というフレーズがぴったりハマる。定番のタラコのパスタはイタリア人が食べても納得する日本生まれの傑作といえる。
寺町二条
気さくなイタリア食堂で絶品タラコスパゲッティを
てらまちころんぼ
「簡単に見えて、以外と技術が必要なんですよ」と店主の吉村雅博さんが笑顔を浮かべながら手早く作るのは、名物のタラコスパゲッティ。タラコとバター、オリーブオイルのみを使用したシンプルな味付けはクリーミーであっさりとしていて、飽きがこないおいしさだ。定食に付くサラダやスープにもこだわり、大原で仕入れた野菜を厳選。素材を生かしたやさしい味付けは、居心地のいい店内の雰囲気にも通じる。
地下鉄京都市役所前駅から徒歩6分
京都市中京区寺町通二条上ル西側要法寺前町709-2
12~15時LO、18~21時LO(カフェ・スイーツのテイクアウトは11時~18時30分LO)
水曜
なし
カウンター席:あり(6席)
1ひとり用の小鍋でいただける熱々のすっぽん鍋(小)2200円 2 京都の冬の味覚・グジを使った蕪蒸し1980円 3 亀岡牛のビフカツ2750円(部位は仕入れ状況によって異なる) 4 その日おすすめの素材が記された黒板 5「達筆な手書きの献立から料理を選ぶのが楽しみ」と門上さん
店主と客が一緒にメニューを完成させる、そんな割烹の魅力を楽しめる店も少なくなりました。素材をよく知る市川さんにおすすめの食べ方を尋ねてみてください。
御所南
当意即妙の和食を楽しむ正統派割烹
かっぽう いちかわ
京料理のたん熊北店など有名割烹店で腕を磨いた店主の市川達也さんが、2018年に満を持して独立。1万1000円〜で味わえるおまかせも用意するが、「女性ひとりで来られる方もよく注文する」のがアラカルトなのだそう。カウンター席には小さな黒板にその日おすすめの素材が記され、店主と相談して即席で調理してもらった料理を味わえる。そんな正統派割烹の醍醐味を、京都で体感してほしい。
1 シャルキュトリー盛り合わせ2人前3080円、ブフブルギニョン(牛肉の赤ワイン煮込み)3080円、クリームブリュレ880円 2 本場・リヨンのビストロを彷彿とさせる店内 3 6名まで座れるオープンなテラス席も人気だ
フランス人の日常食を京都で味わえる貴重な店。居心地のいいカウンター席で、シャルキュトリーをつまみながら過ごすことが多いですね。
河原町三条
フランス空間&美食を古都・京都で堪能
かふぇびすとろ おーぼんもるそー
オーナーシェフの久保正樹さんがフランスのトラディショナルなビストロを目指し、2001年にオープン。「美食の街」として有名なリヨンのビストロを、そのまま京都に移築したような空間は、まるで現地にいるような気分に浸ることができる。久保さんこだわりのシャルキュトリーをはじめ、素朴ながら味わい深いリヨン料理は、ぜひフランス産のワインと合わせて味わいたい。予約がおすすめだ。
地下鉄京都市役所前駅から徒歩5分
京都市中京区河原町通三条上ル東入ル恵比須町534-18 ステラム1階
17時30分〜23時LO(ドリンクは〜23時30分LO)
火曜、第3水曜
なし
カウンター席:あり(4席)
1 たことじゃが芋のサラダ1550円、レモンのスパゲッティアルコ風1400円、グラスワイン900円〜 2 レンガ造りのビル1階にたたずむ隠れ家風レストラン 3 南イタリアさながらの異国情緒あふれる店内
清水さんやスタッフの明るさ、機敏なサービスに元気をもらえます。レモンのスパゲッティアルコ風は素材感が光るおいしさです。ぜひ注文を。
錦市場
マンマの味と心を京都で伝えるイタリアン
カンティーナ アルコ
一乗寺の名店・トラットリア アンティコ出身の店主・清水美絵さんが、南イタリアのマンマから学んだ郷土料理を提供する。日本にはない食材や微妙な火入れ加減はアレンジしつつも、「マンマの味の本質が伝わるように仕上げる」のが清水さんのこだわり。和食にも通じる素材を生かした味わいに、ファンも多い。現地スタイルの昼飲みから楽しい夜の締めくくりまで、使い勝手のよさも魅力の店。
阪急電鉄京都河原町駅から徒歩4分
京都市中京区蛸薬師通麩屋町西入ル油屋町145 洋燈館1階
14時~16時30分LO、18時〜翌0時30分LO
水曜、ほか月1回不定休あり
なし
カウンター席:あり(6席)
1 落ち着きのある店内。2名席が多いので、ひとり利用しやすい 2 京町家に「ト」の字が染め抜かれたのれんが目印 3 ロイヤルスタイルきゅうりサンド1000円、マイルドブレンド1000円
京都の町屋を見事に改装。スペシャルティコーヒーの真髄を味わえる。ヴィーガンの食事、オーディオから流れる音楽もすばらしい。
川端二条
歴史を感じる空間で味わ自家焙煎コーヒー
トリバ コーヒー キョウト
東京・銀座に創業した自家焙煎豆のコーヒー専門店が営む初めてのカフェ。カウンターのショーケースや造り付けの棚など、100年以上の歴史ある和菓子店の趣を残した店内に、初めて訪れた人も懐かしさを覚える。定番の一杯は、京都の軟水に合わせて微調整したマイルドブレンド。店内で焼き上げるパンではさんだロイヤルスタイルきゅうりサンドなど、ヴィーガン食材にこだわるフードもいただきたい。
1 白壁に木の扉、石畳の玄関ポーチが絵になる外観 2 店主の居山貴行(いやまたかゆき)さんがもてなしてくれる 3 古代小麦のバターケーキ480円とブレンド550円
手廻し焙煎機、深煎り、ネルドリップ、時間の流れがゆったりとした空間は、コーヒーを飲む時間の大切さを、きちんと教えてくれる。
新大宮
「市中の山居」でいただく自家焙煎コーヒー
こーひーさんきょ
築90年以上の店舗兼住宅を改装した店内は、北海道民芸の机と椅子が整然と並ぶ静謐な空間。茶の湯の言葉にある「市中の山居」にちなんだ店名らしく、心穏やかに読書をしながら過ごしたくなる。少量ずつ焙煎する豆は、アフリカ、中米、東南アジアなどの栽培環境が優れたものを厳選。手回しロースターでじっくりと焙煎し、ハンドドリップで丁寧に淹れた一杯は、快い苦味と酸味を存分に楽しめる。
市バス下鳥田町バス停から徒歩5分、または市バス大徳寺前バス停から徒歩7分
京都市北区紫野上門前町107
12~18時
火・水曜
なし
カウンター席:あり(4席)
1 東洞院通に面した店舗。店内にはカウンター席も用意 2 ダブルエスプレッソ450円、自家製のバナナブレッド430円 3 店内は明るく開放的な雰囲気。テイクアウトもOK
カジュアルな雰囲気、時代の息吹を感じるスペシャルティコーヒー、ご夫婦の明るい対応も加わり、元気をいただく素敵な一軒だ。
烏丸御池
豆の素材感を引き立てるシンプルな焙煎がこだわり
センティード
垣江逸美(かきえいつみ)さん、遵也(じゅんや)さん夫妻が営むスペシャルティコーヒーのロースター&カフェ。肉や魚を焼くように、素材本来の風味や質感を生かす焙煎が店のこだわり。ほどよい苦味と酸味のバランスのよさが光る一杯が印象に残る。地下鉄烏丸御池駅から徒歩2分という好立地もあり、来店客の約半分は外国人旅行者が占めるのだそう。店内はいつも活気にあふれ、まるで海外を訪れたような気分を味わえる。