山の上から街を見守るようにたたずむ松山城。その松山城を囲むように運行する伊予鉄市内電車は市民や観光客の移動手段として活躍しています。日本最古の湯といわれる道後温泉へ、瀬戸内グルメを求めて繁華街の大街道へ。路面電車でガタゴト揺られ、歴史豊かな松山を楽しみ尽くしましょう。
[東京から]羽田空港から飛行機で約1時間25分、松山空港で松山空港リムジンバスに乗り換えJR松山駅まで約15分、伊予鉄松山市駅まで約25分、大街道まで約30分
[大阪から]JR新大阪駅から東海道・山陽新幹線のぞみで約45分、岡山駅で特急しおかぜに乗り換え約2時間40分、松山駅下車
松山城を望む松山市役所前を走る坊っちゃん列車。現在は土・日曜、祝日の運行
1 街なかではレトロな雰囲気を漂わせる旧型車両と新型車両が行き交う 2 松山市駅から南堀端方面を見たところ。夕暮れどきの伊予鉄市内電車 3 京都市電より譲渡され、昭和54年(1979)から走るモハ2000形車両の運転席 4 国の重要文化財、萬翠荘の入口から車寄せを見たところ 5 道後温泉本館・神の湯(女子浴室)。円柱形の湯釜から湯が注がれる
路面電車を大街道で降り、ゆるやかな坂を上ると5分で、松山城へ行くためのロープウェイ乗り場に到着する。「松山城へ、ようおいでたなもし〜」ロープウェイの中でアナウンスが流れる。「松山城は賤(しず)ヶ岳において武勲を立てた、七本槍でおなじみの加藤嘉明(よしあき)公が慶長7年(1602)から20年以上の歳月をかけて築いたことに始まります」とアナウンスは続き、乗車時間3分の間に、松山城の沿革を簡潔に教えてくれる。
ロープウェイを降り、山頂に位置する本壇を目指す。そびえる石垣を見上げ、重要文化財の戸無門(となしもん)や隠門(かくれもん)など、いくつもの門を通り抜けながら進んで行くと、天守の全容が見えてくる。天守は三重三階地下一階の層塔型で、天守と小天守、櫓を四隅に配置し、渡櫓でつなぐ構造になっている。
城内に入り、天守に上がると、松山市街から瀬戸内海、道後温泉や伊予灘を見渡せ、気持ちがいい。
松山城を後にすると、お腹はペコペコ。元祖 宇和島鯛めし 丸水 本店に飛び込んだ。ぷりっと身のしまった天然真鯛の刺身に、卵黄としょうゆダレを絡め、ご飯の上にのせていただく。名物にうまいものアリだ。
次に向かったのは、国の重要文化財に指定されている萬翠荘。大正11年(1922)、旧松山藩主の子孫・久松定謨(ひさまつさだこと)伯爵が別邸として建てた、フランス・ルネサンス様式の優美な建物だ。敷地内にある漱石珈琲店 愛松亭は、夏目漱石ゆかりの地であることからこの名が付けられている。夏目マドちゃん、夏目坊っちゃんと名付けられた2匹の猫を眺めながら、コーヒーとケーキでひと休み。
1 松山城の天守より松山市街地と瀬戸内海を見晴らす 2 松山城・長者ヶ平駅に向かうロープウェイ 3 松山城は今も日本に残る現存12天守の一つ 4 加藤嘉明着用と伝えられる鎧兜。兜の左右に付いている鳥の羽飾りがユニーク 5 重要文化財の戸無門。長者ヶ平から天守に向かって、最初に通る門になる 6 城内一の高さの石垣、約17mの高石垣 7 城正面の大手側から、本壇の西に位置する石垣と城内最古の野原櫓や乾櫓を見る 8 筒井門の奥の石垣の陰に隠れるように造られた隠門
大街道
まつやまじょう
【別称】金亀城(きんきじょう)、勝山城 【形式】連郭式平山城【築城年】慶長7年(1602)【築城者】加藤嘉明【代表的な城主】蒲生忠知、松平定行、松平勝善
(松山城総合事務所)
愛媛県松山市大街道3-2-46
ロープウェイ8時30分〜17時30分(8月は~18時、12〜1月は~17時)、リフト8時30分〜17時、天守9〜17時(8月は~17時30分、12〜1月は~16時30分)、本丸広場5〜21時(11〜3月は5時30分〜)
天守のみ第3水曜
ロープウェイ・リフト往復券520円、片道券270円、天守観覧券520円
伊予鉄市内電車大街道電停から徒歩5分でロープウェイ・リフト乗り場
10台
※松山城は7月に土砂崩れが発生したため、一部立ち入り禁止となっています。
1 朝どれ1本釣り天然真鯛を使用した宇和島鯛めし2200円 2 味噌汁を作る大鍋や竃(かまど)が見えるカウンター席。ほかにテーブル席もある
大街道
がんそ うわじまたいめし がんすい ほんてん
1 繊細なグラデーションのガラスで、波と帆船を描いたステンドグラス 2 車寄せがあり、アーチが連続するバルコニーや三角屋根の尖塔がある美しい外観 3 水晶のシャンデリアの下はパワースポットといわれている
大街道
ばんすいそう
愛媛県松山市一番町3-3-7
9〜18時(入館は~17時30分)※イベントなどによって変更となる場合あり
月曜(祝日は開館)※一部変更あり。詳しくはホームページで確認
300円
伊予鉄市内電車大街道電停から徒歩5分
20台
大街道
そうせきこーひーてん あいしょうてい
萬翠荘内にあるカフェ。サイフォンでいれるマドンナ珈琲650円とみかんケーキ500円。下の写真は看板猫で、人懐っこい夏目マドちゃん。
愛媛県松山市一番町3-3-7 萬翠荘内
10時〜17時30分(17時LO)
月・木曜(祝日の場合は営業)
伊予鉄市内電車大街道電停から徒歩5分
20台(萬翠荘駐車場を利用)
大街道は松山一の繁華街だ。今宵は瀬戸内の魚や郷土料理を目当てに日本料理 すし丸本店を訪ねる。地酒とともにお造りの盛り合わせや鯛のあら炊きを食べた後に松山鮓(まつやまずし)を味わう。
夏目漱石が初めて松山を訪れ、正岡子規の家に立ち寄ったとき、子規の母・八重が振舞ったのが「松山鮓」。そのとき漱石は一粒もこぼさぬように食べ、以来漱石の好物になったというエピソードから、一度は食べてみたいと思っていた。
宿泊は、レフ松山市駅byベッセルホテルズの伊予鉄ルーム。なんと部屋の中に約60年間活躍していたモハ50形の車両先頭部が置かれている。部屋のソファは座席シートになっていて、網棚も付いている。鉄道ファンならずとも、運転席のボタンを押してみたり、座席に寝転がってみたり、実際の電車ではできないことをやって楽しめる。ご当地食材が出ることで評判の朝食会場からも、路面電車が眺められ、どっぷりと伊予鉄の世界観に浸ることができる。
2日目の朝はガタゴト市電に揺られ、道後温泉へ向かう。日本最古の湯といわれ、『万葉集』などにも登場する道後温泉。そのシンボルが明治時代に建てられた道後温泉本館だ。2019年から始まった保存修理工事の完了に先立ち、7月11日から全館営業再開となった。見事な木造建築、格調高い石造りの浴槽、心地よい湯が堪能できる。
1 右上から時計回りに、お造り盛り合わせ2200円、松山鮓1320円、鯛のあら炊き1100円。松山鮓はアナゴや鯛など瀬戸内の食材を使ったばらずしの一種 2 昭和23年(1948)創業。1階の広々としたカウンター席
大街道
にほんりょうり すしまるほんてん
1 部屋に入った瞬間、路面電車の車両が目に飛び込んでくる伊予鉄ルーム 2 部屋の一角に記念チケットや古いヘッドマークが飾られている 3 部屋の窓からは実際に走る路面電車が見える 4 運転席からベッドを見たところ。運転席に座ってハンドルやボタンを操作することができる
松山市駅
れふまつやましえき ばい べっせるほてるず
愛媛県松山市湊町5-2-2
【IN】14時【OUT】11時
伊予鉄ルーム1室6850円〜・1泊朝食付8350円〜、ツインルーム1室6300円〜・1泊朝食付7800円〜
伊予鉄市内電車松山市駅電停から徒歩すぐ
1382台(1泊1000円)
1 神の湯女子浴室。砥部焼の陶板壁画には大国主命(おおくにぬしのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)が描かれている 2 木造三層楼、塔屋を設けた重厚感のあるたたずまいの外観。公衆浴場で初めて国の重要文化財に指定されている 3 明治32年(1899)に完成した国内唯一の皇室専用浴室・又新殿(ゆうしんでん)。保存修理工事で襖の銀箔が貼り替えられた。観覧大人500円 4 温泉は温度や湧出量が異なる18本の源泉の湯をブレンドして適温にし、加温・加水なしで湯船に注がれる 5 小説『坊っちゃん』にも出てくる休憩室・霊の湯三階個室。お茶と坊っちゃん団子のもてなしがある。1時間30分2500円 6 南棟にある休憩室・霊の湯(たまのゆ)二階席。霊の湯、神の湯の両方を楽しめ、お茶とせんべいのもてなしがある。1時間2000円
道後温泉
どうごおんせんほんかん
(道後温泉コンソーシアム)
愛媛県松山市道後湯之町5-6
6〜23時(札止はコースによって異なる)
12月に1日臨時休館あり
神の湯階下(1時間)700円、神の湯二階席(1時間)1300円、霊の湯二階席(1時間)2000円など
伊予鉄市内電車道後温泉電停から徒歩5分
身体障がい者等専用駐車場2台
「湯上がりビール冷えてます。」の垂れ幕につられ、道後温泉本館の向かいにある道後麦酒館の暖簾をくぐる。まずビールを注文。温泉でほてった体と渇いた喉に、冷えたビールが〝くぅ〜〜〟としみわたる。ここで飲めるのは、すぐ近くの蔵元で造りたての道後ビール。じゃこ天やかまぼこをつまみに、しばし昼間のビールを楽しむ。
山の手方面に歩いて行くと、道後ぎやまんガラスミュージアムがある。「ぎやまん」とはダイヤモンドを意味するオランダ語のディアマント、ポルトガル語のディアマンテが語源。ガラスを切るのに用いたことから、次第にガラス製品全般を指す言葉になった。道後温泉本館では、建築当時斬新だった色ガラスが取り入れられていて、その名残が屋上の振鷺閣(しんろかく)の窓の赤いガラスだ。そのガラスが、2007年に館内で発見され、ミュージアムに展示されている。江戸時代のぎやまん、明治・大正の和ガラスも展示され、うっとりと目の保養ができる。
おみやげは江戸時代から愛される山田屋まんじゅうを。おまんじゅうを買うついでに、併設されている茶房に入り、クリームあんみつを所望する。おまんじゅうに使われているものと同じ上質なこし餡が、梅鉢紋の形に抜かれていて見目麗しく、これはまさに大人のためのあんみつ。思わず笑みがこぼれるのは、幸せホルモンが出ているからに違いない。
道後温泉から再び路面電車に乗って、松山市駅電停へ。旅の最後に、新旧の車両が街を走る姿を、眺めておこう。
1 ビールはドイツスタイルの製法で、ケルシュ(右)には坊っちゃんビール、アルト(左)にはマドンナビールの愛称が付けられている。各250ml・800円。たこわかめかまぼこ(手前)500円、安岡じゃこ天(左)500円など 2 スタンディングのコーナーもあるが、つまみも食べられる座敷のある方に入る
道後温泉
どうごばくしゅかん
1 大正時代の電灯笠や、明治〜大正時代に製作された花入れなどが展示された一角 2 透明ガラスに赤ガラスをかぶせてカットした紅被(べにきせ)カット鯛型鉢 3 ミュージアムの外には水と緑にあふれた庭園が広がっている
道後温泉
どうごぎやまんがらすみゅーじあむ
1 9月いっぱい味わえる山田屋のクリームあんみつ1100円。梅鉢紋型のこし餡、抹茶わらび餅、寒天、白玉などがのっている2 山田屋まんじゅう6個入り972円。北海道十勝産の小豆を使用したなめらかな餡と薄皮で仕上げた上品な甘さのまんじゅう3 広々としてモダンな雰囲気の店内
道後温泉
やまだやまんじゅう どうごおんせんてん
1 記念撮影にも気軽に応じてくれる坊っちゃん列車の機関士 2 道後温泉駅の引き込み線では、坊っちゃん列車の機関車と客車を切り離し、人力で回転させるところが見られる 3 坊っちゃん列車は、土・日曜、祝日の走行時以外は、道後温泉駅前広場に展示されている