男鹿に新ジャンル「クラフトサケ」の醸造所が誕生。酒造りにとどまらず、レストランやショップを併設して男鹿の食文化を発信する。沿線には、酒蔵や酒販店が点在しており、国内外で話題のクラフトジンや、期間限定の日本酒など、新ジャンルの酒を堪能できる。
船川港のほとりに、旧JR男鹿駅舎をリノベーションした醸造所「稲とアガベ」がある。代表の岡住さんは九州の福岡県出身。秋田県に移住して「新政酒造」で働き、その経験を生かして日本酒を造りたいと一念発起。しかし、現在の日本では日本酒を造るための免許の新規発行が認められていない。そのため、日本酒の製造技術をベースに副原料のアガベシロップなどを入れた新ジャンルの「クラフトサケ」の醸造所を創業した。
国内向けの商品は「CRAFTシリーズ」、「DOBUROKUシリーズ」など。伝統を活かした新しい感性で造った酒が話題を呼び、全国各地の酒販店や百貨店などでも扱われるようになった。
酒造りにおいては農薬や肥料を使わない自然栽培米をほとんど磨かず(削らず)に使うことで、豊かな自然を守り、素材の無駄をなくしている。また、酒造りのみにとどまらず、レストランやショップを併設して男鹿の食文化を発信。人々の交流を通じてこの土地が豊かになり、いずれは雇用促進につながることを目指している。
男鹿温泉郷までは車で30分ほど。なまはげの郷でリフレッシュしたら、翌日は各地の酒蔵&酒販店へ。国内外で話題のクラフトジンや、期間限定の日本酒など、秋田で生まれた新ジャンルの酒を堪能したい。
● JR男鹿駅から男鹿温泉までは男鹿半島あいのりタクシーなまはげシャトルを利用すれば約40分
● 各所へは車を利用した方が便利だが、試飲をする場合は奥羽本線、男鹿線、五能線を利用してのんびり電車旅も楽しみ
1.さまざまなタイプの麹をかけ合わせ、独自の"クラフトサケ"を誕生させる/2.醸造所内には大きなタンクが並ぶ/3.「土と風」は8席限定の特別な空間 /4.旧男鹿駅舎を利用した酒蔵 /5.「土と風」コースの一例。メインはソースに山ブドウを使った鴨ロースト。アルコール・ノンアルコールペアリング含み1万4300円〜/6.日中の「土と風」では酒粕ソフトクリーム(カップ450円、コーン500円)やシェイクが人気
男鹿の旬を味わえるレストランとショップを併設
いねとあがべ
海外向けへの日本酒と、国内外向けのクラフトサケを造る醸造所。併設のレストラン「土と風」では秋田や男鹿を中心とした食材を使い、2人の気鋭の若手シェフが腕をふるう。発酵やフレンチ、イタリアンなどの要素を織り交ぜた月替わりのコース料理は完全予約制だ。日中は酒粕を使ったソフトクリームや「鶏出汁と山椒カレー」など軽食も味わえる。
日本海沿岸を走る鉄道の沿線には歴史ある酒蔵が点在。伝統を守りつつ、時代に合った新商品を開発している。秋田駅近くのみやげ物店やこだわりのおにぎりもお見逃しなく。
1.男性用の露天風呂にはなまはげ面が飾られている/2.追加料理ではきりたんぽ鍋も人気/3.「なまはげ」をモチーフにしたコンセプトルームなど多彩な客室を備えている/4.男鹿温泉郷の高台に位置する
直源泉から注ぐ温泉と男鹿の海の幸が魅力
もとゆ ゆうざんかく
自慢の大浴場には直専用の源泉から引いた茶褐色の湯が注ぎ、季節や気温によって緑や白色へと湯色を変える。夕食ではジャガイモで作った「あんぷら餅」や、石焼料理など男鹿の味覚を味わえる。
1.クラフトジン ナイトトラベラー700ml4400円。粕取り焼酎をベースに30種類もの植物で香りづけしている/2.明治34年(1901)創業の歴史がありながら、新しい取り組みを続ける酒蔵
白神山地の麓で生まれた遊び心のある日本酒
やまもとしゅぞうてん
「白爆(しらたき)」の銘柄で知られた酒蔵だったが、廃業寸前に山本氏が引き継ぎ杜氏制を廃止し蔵人みなで協力しての酒造りを開始した。「山本」銘柄の日本酒をはじめ、酒粕から抽出した吟醸香とアルコールをベースに造った国産クラフトジン「ナイトトラベラー」が人気。
1.産学官プロジェクトで生まれた秋田杉GIN500ml3113円。秋田杉のすがすがしい香り/2.週末にはイベントなども開催される
秋田で話題の商品をいち早く発信するアンテナショップ
あきたけんさんひんぷらざ あきたの
秋田駅近にあり、県内産の銘菓や工芸品、酒など約4000点を販売。秋田県醗酵工業が造る秋田杉GINなど話題のジンや、若手蔵人が造る新酒もいち早く取り揃えている。秋田米新品種「サキホコレ」関連商品も要チェック。
1.お米の食感やうま味を凝縮した極上のおにぎり。紅鮭(ぼだっこ)250円(左)といぶりがっこチーズ230円(右)/2.店頭では和洋中の手作りの惣菜も販売している
素材と握り方にもこだわったおにぎりの専門店
いちもんじ とぴこてん
店先にはバラエティ豊かなおにぎりが20種類以上! 特別栽培米のあきたこまちを使い、炊きたてあつあつのご飯をすばやく握っている。種類はおかか、昆布など定番をはじめ、秋田名物のいぶりがっこを使った「いぶりがっこチーズ」など珍しいものも。
2022年、「コシヒカリを超える極良食味品種」をコンセプトに開発された新品種が誕生した。限定した生産者が栽培し、つややかな見た目とふっくらとした粒立ち、口の中に広がる甘い風味が特徴だ。秋田米を牽引する存在として期待が高まっている。
1.「天巧」の原酒を無濾過の生酒のまま瓶詰めした限定品。720㎖3850円/2.和風モダンな空間で買い物やテイスティングができる
日本酒、味噌、醤油まで発酵食品の魅力を伝える
こだまじょうぞう くらしょっぷ くらぶ
明治12年(1879)創業の秋田を代表する味噌・醤油・酒の蔵元。「太平山」ブランドの酒は全国でも知られる銘酒だ。KooLabでは種類豊富な酒を販売するほか、試飲も可能。「天巧3種類飲み比べセット」1000円も楽しめる。