古くから天然の良港として栄えた広島県・瀬戸田。この瀬戸田の一角で、築約140年という豪商・堀内家邸宅の母屋を改装し、新たな宿泊棟を設け、旅館「Azumi Setoda」が2021年に開業した。世界各地にリゾートを展開するアマン創業者、エイドリアン・ゼッカ氏が考える「旅館」の最新スタイルがここにある。
1.瀬戸田港から耕三寺博物館(耕三寺)に至る参道でもある「しおまち商店街」の西端。看板などはなく、建物は町並みに溶け込んでいる/2.客室は全4タイプ。1階にある「客室 庭」は各部屋箱庭付き。ベッドそばの雪見障子を上げて風景を楽しめる/3.アメニティは体に優しいものをセレクト。部屋着は白いTシャツとコットンパンツ、羽織というカジュアルスタイル/4.堀内家から受け継いだ庭などの伝統の建築美と、ゼッカ氏の現代的な発想で館内の空間が構成されている/5.メインダイニングは旅人同士の出会いがあるようにと、見通しのよい造り。中央のドリンクカウンターをテーブル席が囲む/6.瀬戸田や堀内家の歴史を感じられるギャラリー/7.ディナーは近隣食材を使った料理をコースで。茎から葉まですべてを使った人参のスペシャリテなど、一皿一食材のスタイル/8.この旅館の「余白」として存在するガラス張りの東屋。時には茶席やヨガスタジオなどに
人・地域・文化とつながる滞在を
あずみ せとだ
海運業で財を成した堀内家の築約140年の母屋を改装したフロント、メインダイニングなどの棟と、新設した宿泊棟の2棟からなる。館内には同じく新設した庭と蹴鞠垣、東屋、堀内家の所蔵物を展示したギャラリーなども。
西瀬戸自動車道(しまなみ海道)生口島北ICから約7㎞
広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田269
1泊朝食付8万5000円~、夕食1万8150円~
IN16時/OUT12時
20台
1.Azumi Setodaの外風呂にあたる「yubune」の、瀬戸内の昼の情景を描いた大浴場「hinagi」。繊細な壁画は美術家・ミヤケマイ氏によるもの/2.もう一つの大浴場「tsukinagi」は瀬戸内の月夜を表現/3.あえて館内にレストランはない。宿泊時の食事は近隣の飲食店を利用する/4.「yuagariラウンジ」には瀬戸内海の文化・歴史に関するライブラリーが。湯上がり時にのんびり読んでみたい/5.全14室の客室は3タイプ。シンプルながら国産檜材の温もりが感じられる空間でくつろげる
銭湯感覚で泊まりたい現代の旅籠
ゆぶね
島の情景が壁一面に描かれた浴場は「Azumi Setoda」の外風呂であり、日常の延長線上として近隣住民も利用する銭湯。かつての旅籠感覚で宿泊できる客室を備えているほか、瀬戸内の文化を伝えるライブラリーやショップも併設する。
西瀬戸自動車道(しまなみ海道)生口島北ICから約7㎞
広島県尾道市瀬戸田町瀬戸田269
入浴900円(GW・8月・年末年始は変更あり)、1泊素泊まり3万 円~
7~22時(日帰り入浴は10~20時)、火曜7~10時、17 ~22時(日帰り入浴は17~20時)、宿泊はIN16時/OUT12時
無休
20台(宿泊者限定)
レモンをはじめとした柑橘グルメと、島にちなんだアートが人気の瀬戸田。観光スポットがギュッと詰まった散策しがいのあるエリアだ。生口島と大三島をつなぐ多々羅大橋のたもとには、「レモン谷」とよばれるレモン畑が広がる。
1.耕三寺は大阪の元実業家・耕三寺耕三氏が私財を投じて建立した浄土真宗本願寺派の寺院/2.イタリア産大理石を約3000t使って造り上げた未来心の丘は、その風景からフォトスポットとしても人気
大理石の丘から島の景色を望む
こうさんじはくぶつかん(こうさんじ)
奈良~平安時代の代表的な寺院を手本にした極彩色の堂塔伽藍は圧巻。仏教、茶道、近代美術の貴重な作品を展示する博物館や世界的彫刻家・杭谷一東(くえたにいっとう)氏による大理石の庭園「未来心の丘」など、みどころ多数。
1.三重塔の裏にある小高い丘を登ると、塔の屋根瓦と瀬戸田水道を一望する展望台がある/2.三重塔は永享4年(1432)の建立。長い石段を登った先に立つ
国宝三重塔と海の景色を一望
こうじょうじ
室町時代初期は臨済宗として創建され、現在は曹洞宗の寺院。潮音山(ちょうおんざん)の山頂に位置する国宝の三重塔は、和様に唐様を取り入れた折衷様式。外郭各層には極彩色が施され、室町期で最も美しく優れた建築物の一つに数えられる。平山郁夫はその姿を終生描き続けた。
1.群畜穹閭(ぐんちくきゅうりょ)など貴重な作品を所蔵。物資も少ないころ、貴重な紙に描かれた幼少期の絵からも非凡な才能が感じられる/2.美術館に入ってから広がる庭も見事。ひょうたん島を中央に瀬戸内海の風景を模す/3.門からのアプローチ。建物は両国国技館などを設計したことで知られる建築家・今里隆氏が設計
巨匠の作品と才能を間近に
ひらやまいくおびじゅつかん
日本画の巨匠・平山郁夫の故郷であり、少年期を過ごした瀬戸田町に開館。瀬戸内や仏教、シルクロードなどをテーマにした数々の名画をはじめ、大下図(最終的な下絵)も展示。生い立ちや貴重な少年時代の絵画なども紹介している。
1.あなごのしゃぶしゃぶ2500円(要予約)は島ならではのごちそう/2.煮アナゴを使った穴子丼1280円。テイクアウト用の穴子丼弁当もある
活魚料理が充実する食事処
かねよし
看板メニューはさっと湯にくぐらせ、自家製ポン酢で味わう瀬戸内海産真アナゴのしゃぶしゃぶと、秘伝のタレで仕上げる穴子丼。このほか、鯛やアコウ、瀬戸内の小魚など、店主自ら釣り上げた活魚の一品料理にも注目を。
西瀬戸自動車道(しまなみ海道)生口島北ICから約6㎞
広島県尾道市瀬戸田町沢209-27
11時30 分~14時、18~22時(日曜、祝日は~21時)
水曜
15台
1.店内から瀬戸内海の景色が見渡せるように、抜け感のあるガラス張りの空間になっている/2.「SOIL Setoda」は旅人と地域住民の交流施設として2021年にオープンした/3.ランチは定番のバターチキンカレー1200円(写真)や週末限定の薪焼き定食などが味わえる
町のリビングルームでひと休み
みなとや
瀬戸内海に臨む港を目の前に、宿泊や観光案内所を備えた複合施設「SOIL Setoda」(そいる せとだ)内の食堂。地元でとれた魚介類や野菜などの食材を使った薪火調理のフードメニューをはじめ、スペシャリティコーヒーやレモンソーダなどのドリンクも味わえる。
1.瀬戸田はもちろん、広島みやげとしても人気のある店。イートインもできる/2.レモン1個が丸ごと入った、まるごとレモンスカッシュ500円などのドリンクも用意/3.瀬戸田レモンケーキ島ごころ1個270円。賞味期限は約3日、当日に焼いた本店限定の焼きたてレモンケーキ1個270円もある
名物レモンケーキをおみやげに
しまごころせとだ せとだほんてん
神戸で修業を積んだパティシエが完成させた、瀬戸田産レモンを使った レモンケーキが自信作。「G7広島サミット2023」でも振る舞われたとか。れもん饅頭200円や瀬戸田レモンジャム1080円、ネーブルケーキ270円など、多彩な柑橘スイーツが揃う。
レンタサイクルなどを利用して作品を探してみるのもおすすめ
しまごとびじゅつかん
瀬戸田には現代アートのアーティストが島の風景からインスピレーションを受けた17作品があちこちに。マップは尾道市の公式ホームページでチェック。
【車】山陽自動車道広島ICから尾道JCT経由で西瀬戸自動車道(しまなみ海道)生口島北ICまで約105㎞